放射成分分離のためのベイズモデルの開発 実験的に開発した成分分離モデルを査読論文として出版した。その内容についてさらに議論を深めるため、2010年7月にドイツ・ブレーメンで開催された国際研究会「Time Variability at High Energies : a Probe of AGN Physics (including VLBI)」において研究成果の発表を行った。現地での議論を通して、本手法の電波観測への応用や、過去の公開データを使用した研究など、応用範囲が広がる可能性がでてきた。 モデルの計算方法の改善について、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)の計算と混合に掛かる時間を短縮するため、単純なメトロポリス法以外に、Multiple-Try Metropolis法やレプリカ交換法、共分散行列の推定、などを試みた。また、一部計算を並列化させることで、従来の約1/7に計算時間を短縮できた。 ブレーザーの光度・色・偏光の相関関係 ブレーザーの普遍的な観測的特徴を確立するため、これまでに広島大学かなた望遠鏡を使って得られたデータを用いて、それらの光度と色と偏光の相関を研究した。その結果、光度と色は非常に強い相関を示すのに対し、光度(もしくは色)と偏光の相関は弱いことが明らかになった。これは複数の偏光成分の存在を考えると説明することができる。また、顕著なフレアに関してはそのスペクトル変化にヒステリシスが見られる傾向を発見した。これは、ジェット中の放射領域の速度変化がフレアの主原因ではなく、衝撃波などによる放射領域へのエネルギー注入が主原因であることを示唆する。これらの結果を論文にまとめ出版が決定した。
|