研究課題/領域番号 |
22540252
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
植村 誠 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (50403514)
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キーワード | 天文学 / 活動銀河核 / ジェット / 降着円盤 |
研究概要 |
本年度は活動銀河核ジェットからの放射が卓越している天体「ブレーザー」の観測データ解析と並行して、その偏光データ解析で蓄積した高次元問題へのノウハウを活かし、ジェットと関わりの深い降着円盤のモデリングも行った。 1.ブレーザーの偏光特性の研究 特に大きく偏光が変化する天体に焦点をしぼり、短時間かつ大規模なフレア現象には偏光度の顕著な増加が付随する傾向を見出した。この傾向はジェット内に起源をもつフレアは磁場の向きが揃っている領域で発生していることを示唆し、時間変動現象の機構に重要な手掛かりを与えた。また、フレアに伴う偏光度の増加は本研究で開発している成分分離モデルの仮定となっているため、このモデルの正当性が支持された。 2.降着円盤の3次元構造再構成の研究 ブレーザーの偏光成分分離モデルによって、高次元問題に対するベイズ統計的アプローチのノウハウを得たため、それを利用した降着円盤構造の再構成手法を開発した。用いたデータは矮新星の早期スーパーハンプと呼ばれる現象で、降着円盤の幾何的構造を反映しているものと考えられている。このハンプを可視光-近赤外線の多バンドで観測し、光度変化から円盤の方位角方向の構造を、色変化から動径方向の構造を再構成し、円盤の3次元構造を推定するモデルを開発した。この手法によって再構成された円盤構造は、潮汐力の効果によって理論的に期待される歪みに似た構造をもっており、理論と観測のさらなる共発展につながる成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、放射源の成分分離のために必要となる高次元データ解析の検討については順調に進んでいる。特にベイズモデルやその具体的な推定方法となるマルコフ連鎖モンテカルロ法について、基本的なメトロポリス法以外に、レプリカ交換モンテカルロ法など発展的な手法の検討も既に行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は間欠的なフレア成分と長期変動成分とを分離するため、フレアのランダム性・低頻度性に着目したモデリングを検討し、実際のデータに応用する。これによって、これまでは困難だった、重なり合ったフレアの分離を試みる。また、既に取得済みであるブレーザーの偏光データについて、特にデータが充実している数天体に焦点を絞って集中的な解析を行うことで、ブレーザーの偏光構造を詳細に明らかにする。この解析でも成分分離モデルの手法を応用する。
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