研究概要 |
超新星残骸で見つかった再結合プラズマ状態(recombining)の起源について,超新星爆発時に周囲の物質が光電離された可能性,超新星爆発が恒星風物質中で起きて衝撃波がその物質を抜ける際のrarefactionにより再結合状態が生じた可能性,また,衝撃波で加速された粒子あるいは宇宙線によって超新星残骸プラズマの一部が過電離状態になった可能性を検討した.再結合X線放射を示す超新星残骸の探査も進み,これまでに見つかったものは全て,mixed-morphology(電波でシェルが明るく内部にX線放射域がある)に分類される超新星残骸である.その解析結果も考慮すると,再結合プラズマの最も有力な物理過程として,高い電離状態での急激な温度降下が考えられる.上の2番目の可能性で期待される過程で,超新星の周囲にあった,例えば恒星風物質から衝撃波がブレークアウトする際,急激な断熱膨張によって,一度,逆進衝撃波で加熱された超新星物質が急激に冷却される. 観測されるようなX線輝度分布をこのシナリオで再現できるか確かめるため,赤道面方向に偏る非一様恒星風物質中で爆発した場合の超新星残骸の力学的進化を3次元流体数値計算によって調べた.その結果,極軸方向,赤道面方向とも衝撃波のブレークアウトが起こり再結合進行状態が生じるが,極軸方向では早くに2度目の逆進衝撃波が物質を再加熱して電離進行状態に戻る可能性もあることが分かった.星間空間に伝播する衝撃波はシェルを形成するがX線輝度は低く,その内部で,逆進衝撃波によって加熱された超新星物質から再結合X線が放射されるという描像を得た.仮定した恒星風物質モデルにどのように依存するか,さらに計算を進めている.また,再結合X線放射を示す超新星残骸の系統的な観測的研究をSuzakuのkey projectとして提案し採択された.
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