Suzakuによる観測的研究から,再結合X線放射を示す超新星残骸は,電波の強度分布はシェル様であるがX線はその内部に非球対称な分布を示すmixed-morphology (MM-SNR) に分類されるものであることが分かってきた.理論的研究では,恒星風物質中で爆発した超新星の残骸の進化を数値計算で追い,再結合X線放射やMM-SNRのX線輝度分布を再現できることが分かった.このX線は熱的過程によるもので,reverse shockが伝播した超新星放出物質から放射される.一方,forward shock (blast wave) が伝播した星間物質シェルからのX線放射は密度が低いために暗い.しかし,星間物質シェルからは,衝撃波で加速された非熱的粒子によるシンクロトロン電波やγ線が期待され,実際,MM-SNRの電波強度分布はX線放射の外部に広がったシェル様である. そこで,X線放射をよく説明する超新星残骸の力学モデルを用いて,星間物質シェルにおける粒子加速と,それによるシンクロトロン電波強度,および,制動放射,宇宙背景放射光子との逆コンプトン散乱,陽子-核子衝突によるγ線強度を理論的に計算した.MM-SNRの観測と比較して,電波強度はよく一致するがγ線強度は1桁弱いという結果を得た.しかし,MM-SNRは比較的重い星のコア崩壊型超新星と考えられ,その環境にはH II領域や分子雲など星形成領域の特徴が見られる.実際,メーザーやγ線放射から分子雲との相互作用が示唆されている.このような環境を考慮し,例えば加速粒子の約10%が典型的密度の分子雲と相互作用すればγ線強度も観測値と一致することを示すことができた.この結果を学会で発表するとともに学術誌に投稿した (受理済).この研究を基に,MM-SNRとシェル型SNRの粒子加速の差異について研究を進めている.
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