研究課題/領域番号 |
22540254
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加藤 万里子 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50185873)
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キーワード | 天体物理学 / 理論天文学 / 新星 / 白色矮星 |
研究概要 |
本年度は英文の原著論文2編、国際会議4件の発表を行った。主な成果として、第一に、遅い新星について、これまでのように個々の新星の光度曲線を理論的に再現するだけではなく、新星風への理解も深まったと考える。白色矮星の質量が重いと新星風が起こり、軽いと起こらないことは従来から私どもの研究で知られていたが、はじめは新星風が起こらない"おとなしい"爆発だったのに、途中から新星風が噴き出す場合があること(これは近接連星系で伴星の運動によるフリクション効果によることを解明した。したがって長周期連星では変移は起こらない)、また新星風が起こらない場合には、光学的に薄い質量放出が起こること、などが新しくわかった。これらは、これまで申請者が提案・発展させてきた新星風理論にとって、質量の小さい極限で実際に新星風理論が確かめられたことにもなる貴重な成果である。第二には、Ia型超新星へ至る連星系の進化の中で、新星風が起こる時期があることが進化にとって重要な役割を果たすが、これを詳しく研究することにより、チャンドラセカール質量を超える白色矮星が存在できることを理論的に示した。最近Ia型超新星の親天体の理論として、SD説とDD説がせめぎあっているが、私どもはSD説に立って、超チャンドラセカール質量の白色矮星がいかに自然に説明できるかを示した。また国際会議での招待講演をしたり、その場での出席者との議論を通じて、超新星の分野での研究方向をわたしたちがリードしてきていると自負している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで解析を行ってこなかった新しいタイプの新星について解析を行うことができた。またIa型超新星とのかかわりで、新星風理論を発展利用することができた。共同研究や国際会議で広げた人脈を利用して、これまで以上に観測家との議論を広げることができた。その結果、研究の進展が得られただけではなく、広い視野にたって見通しをたてることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
この研究は理論面を深く研究するだけでなく、観測家の協力が欠かせない。そのために、今後もいっそう国内外の研究者と連携をとり、個々の新星について詳しい光度曲線モデルを作るだけでなく、同種の新星にも広く応用できるよう一般化した知見を得ることが重要である。
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