研究目的の実現のために、今年度はまずG型巨星の観測データを得ることから開始した。中質量のG型巨星の系外惑星と褐色矮星探査の枠組みで、学外研究者と共同研究の形で岡山天体物理観測所にて高分散分光観測を行った。これまで約60星のデータを得て、1次元スペクトルに整約した。現在この標本について、鉄および炭素から亜鉛までの元素組成を求めるために必要な各恒星の大気パラメーターを求めている。約1/3の数の恒星についてパラメーターの解析を終了している。 一方、系外惑星の探査の結果として、1星に惑星が検出された。現在この結果を論文として取りまとめている最中である。4月には、日本天文学会の欧文学会誌に投稿予定である。 関連の研究として、金属欠乏ハロー星と太陽的な惑星探査の対象となっている銀河系円盤星の硫黄組成の振る舞いと彩層の存在に関する結果をまとめた。雑誌論文の1番目の硫黄組成の振る舞いについては、これまで数星においてしか解析されていなかった硫黄の1.046ミクロン吸収線を、33星で解析した。主な結果は:(1)太陽的な金属度領域ではほぼ太陽値を示す。(2)金属度が太陽値の1/30から1/300の領域では、太陽値の2倍程度の平坦傾向を示す。(3)金属度が太陽値の1/300以下の領域では、平坦的な傾向から急激な増加を示し、太陽値の6倍にも達する。(4)これらの振る舞いは、これまで別の吸収線から得られている振る舞いと低金属度領域では異なっているが、硫黄組成の振る舞いを研究するための吸収線として1.046ミクロンが有用であることを示す。 2番目の論文では、これまで全く研究されていなかった金属欠乏星の彩層について、中性ヘリウムの吸収線1.083ミクロンの解析から、その確実な存在を証拠立てた。彩層の形成機構については、自転や磁場と関係ない機構(例:音波加熱)が示唆された。
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