研究課題/領域番号 |
22540255
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
比田井 昌英 東海大学, 総合教育センター, 教授 (90173179)
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キーワード | 化学組成 / 恒星分光学 / G型巨星 / 矮星 / 系外惑星 / 金属欠乏星 / 褐色矮星 / M型矮星 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、国立天文台岡山天体物理観測所において、学外研究者との共同研究として平成23年1月から24年3月までの期間に、G型巨星周りの惑星および褐色惑星の探査の観測時間をもらい、これまでに合計約80星の高分散分光観測を行った。波長域4300-8000A、分解能65000、S/N>150の良質のデータを得た。これらのデータから、HD100655の恒星周りに1.7木星質量の惑星を検出した。この恒星の化学組成として鉄組成は太陽値に対して・+0.15dex超過していることが判明し、惑星を持つ恒星の大きな特徴に当てはまる。また恒星質量は2.4太陽質量であり、このような恒星の惑星としては最も小さい質量をもつ惑星となり、G型巨星周りの惑星形成に対して新たな知見を与えた。 これまで得た惑星を持つ矮星と巨星、約70星について引き続き化学組成解析を継続している。炭素から亜鉛までのα元素と鉄族元素について、恒星大気変数を決定し、吸収線の等価幅測定をほぼ終了している。 一方、すばる望遠鏡を用いて、低金属度領域のG、K型矮星と巨星13星を近赤外線領域で観測し硫黄組成を解析した。昨年度の30星の硫黄のデータと合わせて、その振る舞いを明らかにした。惑星を持つ恒星ではないが、同じような金属度を持つ恒星における振る舞いは太陽値的であることが判明した。また、論争されていた低金属度領域では+0.3-0.4dex程度の超過で、平坦傾向となることも判明した。 さらに、低金属度の13星の中性ヘリウム吸収線を観測した。太陽的な恒星でも観測されているが、金属度が低い恒星でも観測され、このような古い恒星にも一般的に彩層が存在することが判明した。彩層の形成に関する新たな知見である。 M型矮星周りの地球型惑星探査の研究として、M型矮星の大気構造に関するモデル計算について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中ですばる望遠鏡による観測データが得られたので、その解析に時間を割いたため、惑星を持つ恒星の化学組成を等価幅から求めることが、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
惑星を持つ恒星の等価幅からの化学組成解析を大学院生と学外者の共同研究者とともに進める。その結果を得る作業と並行して、恒星の性質としての力学的性質を調べることにする。最終的に得られた化学組成と力学的・物理的な性質との間の相関関係などを調べて、惑星形成への知見を得る。
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