当該年度において、学外研究者と共同で巨星周りの惑星と褐色矮星の探査を目的として、国立天文台岡山天体物理観測所において約70星の分光観測を行った。これまでの観測から視線速度変動が観測されている星のより密な観測より、1星に惑星が検出された。11星に惑星と考えられる変動が検出されたが、さらに確認観測をする必要がある。 もし惑星であれば、3-4太陽質量の巨星にも惑星がありうることになり、惑星形成に関する新たな知見となりうる 一方、組成解析のために、これら70星中で速度変動が無い20星程と速度変動を示す約11星について高分散分光観測を行った。鉄の組成解析から、両者とも太陽的な鉄組成分布をすることが判明した。惑星を持つ矮星の鉄組成は、系統的に太陽より超過するという傾向との差異の理由は、今後検証しなければいけない。 組成解析では、大学院生の協力を得て、岡山天体物理観測所で得られた惑星を持たない73星と持つ18星の分光データに基づき、炭素から亜鉛までの13元素について組成解析を行った。13元素を加算した総金属度は、鉄による金属度の75%に対応することが判明し、惑星形成論で使われている鉄の金属度より総金属度を使うべきことが示唆された。特に鉄が少ない場合は重要となる。 また、関連研究として、α元素の硫黄と珪素の振る舞いを調べた。硫黄は、低金属度領域では[Fe/H]に対して+0.4 dex 程度の値で平坦な傾向を示す。また、珪素は硫黄と似た振る舞いを示すが、近赤外吸収線による組成解析ではNLTE解析を行う必要性が確認された。
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