研究課題
彗星に含まれる太陽系形成初期の始原物質を探査することを目的に、平成23年度は前年度から引き続き世界トップクラスの大型望遠鏡による近赤外線高分散分光観測およびこれをサポートするための高分散可視光分光観測ならびに低分散分光観測を実施した。観測はいずれも日本の国立天文台Subaru望遠鏡およびW. M. Keck天文台の10m口径望遠鏡Keck2である。また、昨年度にNASAが実施した彗星探査ミッションEPOXIの際に同様に大型望遠鏡で観測したデータについても解析・研究を進め、探査機によるその場観測と地上からのリモート観測の同時成功によって、ハートレイ第二彗星に含まれる氷のSegregationの可能性が明らかになりつつある。これにより、単に彗星氷の成分によって形成環境を探るということのみならず、彗星氷のSegregationによって、その熱履歴についても議論が可能となる可能性がある。また、これらと平行して、日本のAKARI衛星によって行った彗星CO2氷のサーベイ観測を論文として出版するはこびとなった。これは世界でも始めてのCO2サーベイであり、今後10年以上、彗星科学の分野において重要な基礎データとなるものである。さらに、従来行ってきたH20やNH2による水そしてアンモニアのオルソ/パラ比の解析に加え、新たに可視光高分散分光データに基づくH20+のオルソ/パラ比彗星ならびにそれによるH20オルソ/パラ比推定について新たな手法を確立した。これにより、近赤外線分光観測によるH20オルソ/パラ比の直接推定のみならず、可視光高分散観測による間接測定が可能となる可能性が高い。このことについて検討を行った論文が出版された。
2: おおむね順調に進展している
観測そのものについては、天候等の問題や望遠鏡時間確保のためのコンペティションが厳しいため、若干、遅れ気味である。一方、理論的取組みについてはH20+に代表されるような新たな手法開拓にも成功を収めており、全体としては順調であると考えている。
更に観測時間確保に注力することが重要であり、また、理論的取組みについても更に適用範囲を広げるための対応を行うことを予定している。
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