研究課題
今年度は、103P/Hartley2彗星の近赤外線高分散分光観測結果の取りまとめと論文化を中心に、HILL彗星(C/2010 G2)が太陽から2.5AUにて起こした急増光減少の解明に向けた研究を推進した。103P/Hartley2彗星は、NASAのEPOXI彗星探査計画のターゲットとなった彗星であり、木星族短周期彗星の一つである。EPOXI探査機はこの彗星に接近通過し、その表面の様子などをその場観測した。本研究課題の遂行のため、河北は同彗星をハワイ島マウナケアに設置されたKeck2望遠鏡を用いて観測しており、平成24年度のそのデータの解析および論文化を行った。極性を持つ分子と無極性の分子とでコマ内での空間分布に違いがあることを見いだした。これは異なるフェイズの氷として彗星核内に保持されている可能性があり、星間氷の再加熱など、熱史を探る上で重要な糸口であると考えられる。また、探査機の接近観測と同時に神山天文台において実施した可視光分光観測の結果についてもとりまとめた。当該彗星は可視光スペクトルの観点からは極めてノーマルな彗星であると見られるが、実際には探査機いよるその場観測などによって、特異な組成を持つ事が判明しており、可視光分光観測の有用性と限界について知見を得た。一方、同じく河北がKeck2望遠鏡を用いて行ったHILL彗星の観測は、当該彗星が太陽から2.5AUという比較的遠方において急増光した際のデータであり、彗星における急増光のメカニズムを明らかにする上でも重要である。今回の観測からは、同彗星がメタンなど超揮発性の分子に富んでいることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、スペースや地上からの木星族短周期彗星の観測を有機的に結合し、そのサンプル数を増やし、未だ未知の部分が多い短周期彗星の本質に迫ることが目的であった。幸い、NASAが2010年秋に実施したEPOXI探査計画は成功し、多くの成果を生んだ。これに関連して、探査機の観測とほぼ同時期に地上から実施した観測との共同研究が進んでおり、論文としての出版も順調であることから、本計画は予定通りの進展であると言える。
今年度は研究計画の最終年度にあたっており、これまでに観測で得られたデータの最終的な取りまとめおよび報告を行うことが課題である。一方、今年度には2P/Encke彗星が順調に回帰しており、これを近赤外線+可視光線にて高分散分光観測を行実現にむけて、世界の大型天文台への観測提案書を提出している。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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10.1016/j.icarus.2012.08.001
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