研究課題
カイパーベルトを起源とする彗星は、オールト雲を起源とする彗星とは46億年前の原始太陽系円盤中での形成環境に違いがあると考えられている。そのため、彗星核に含まれる氷の化学組成比について、系統的な違いが見られる可能性があり、その違いから原始太陽系円盤中での物質化学進化を明らかにできると考えられる。しかし、カイパーベルトを起源とする彗星の多くは比較的短周期の軌道を持ち、頻繁に大陽近傍を通過するため、一般的には彗星核の大きさが小さく、ガス放出率が小さい。そのため、彗星の光度が比較的暗く、高いS/N比を必要とするガス組成比決定のような観測が困難な場合が多い。そこで本研究では、世界有数の口径を持つ日本のSubaru望遠鏡や米国のKeck望遠鏡の共同利用観測時間に応募し、これらの望遠鏡時間を確保することで、比較的暗いカイパーベルト起源の彗星について、近赤外線波長域での高分散分光観測を集中的に実施した。また、彗星核に比較的多量に含まれていると考えられるものの地上からは観測が不可能な分子種については、宇宙望遠鏡による観測を実施している。近赤外線高分散分光観測には、米国ハワイ島マウナケア山頂に設置されたW.M.Keck天文台のKeck望遠鏡2号機とNIRSPEC分光器等を用い、波長3μm付近において波長分解能2万の分光を行った。彗星コマ中のガスについて、太陽光励起によって発光したシグナルを観測し、水、メタン、エタン、シアン化水素、メタノールなど、各種の有機分子の観測を行った。また、宇宙望遠鏡としては日本のAKARI望遠鏡による観測サーベイも実施し、地上から観測不可能な二酸化炭素についても水に対する成分比を決定している。これらの結果から、カイパーベルト起源の彗星は、化学組成の面からもオールト雲起源の彗星とは差が見られるものの、その一部については形成された領域に重複が認められた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Astrophysical Journal
巻: 782巻 ページ: 16
10.1088/2041-8205/782/2/L16