I.平成22年度は、当初予定していた系内大質量星形成領域におけるウォルフ・ライエ星(WC型)の探索のため、ぐんま天文台・150cm望遠鏡搭載近赤外線カメラを使って観測を行った。その結果W51領域において、これまでカタログ化されていないWC型WR星の候補天体をピックアップすることに成功した。またそれとは独立に、同等のフィルターシステムを搭載した、東京大学チリ・アタカマ1m望遠鏡搭載の近赤外線カメラを用いて、北半球からでは観測できない南天の大マゼラン星雲内の大質量クラスターのWR星ピックアップ視測を行った。その結果、これまでカタログに存在したWR星を確認できた他、新たに複数のWC型WR星候補天体も検出した。これらの結果は、本研究の目的としている、減光が大きく可視光では見えていないWR星の存在(発見)を観測的に示唆するものであり、星形成領域での大質量星の質量-個数分布に制限をつける上で貴重なデータになりうる。 II.ピックアップされた天体の詳細分光視測のために、近赤外線エシェル分光器の立ち上げも行った(東京大学・天文学教育研究センターとの共同研究)。この装置は平成22年秋に北海道大学1.6m望遠鏡(@名寄市天文台)に搭載され、試験観測を経て本研究の目的を達する性能を有していることを確認した。本格的なフォローアップ観測は平成23年度以降行う。 III.現在のフィルターシステムではWC型WR星のピックアップのみに有効であるため、タイプの異なるWN型WR星にも検出感度を持つように、新規フィルター(HeII2.19micron)の設計・製作を行った。これは平成23年度の観測装置メンテナンス時期にあわせて、装置(クライオスタット)内にインストールする予定である。 IV.上記Iの項目について、所属する学会(日本天文学会)の年会において発表を行った。
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