研究最終年度となる平成24年度は、主にこれまでの研究成果に引き続き観測データの収集に努めた。特に継続的に観測的研究を行っているマゼラン星雲内大規模星形成領域について、これまでの観測で不足していた近赤外線3バンドによる撮像観測を完遂を目指した。観測はチリ・アタカマ高地チャナントール山頂にある東京大学アタカマ天文台miniTAO-1m望遠鏡搭載の近赤外線カメラANIRを用いた。miniTAOでの観測は運用の都合上観測時期が限定される上、インフラ設備の不具合などによりこれまで計画通りには進まなかったが、平成24年度の秋の観測をもって当初実施計画に記載した観測を終えることができた。簡易解析の結果によれば、これまでカタログ化されている既知の大質量星のほぼ総てを検出した他、幾つかの新天体の候補も見つかっている。また、3バンドを用いた色ー色図により、低温度星やミラ型変光星・YSO天体も含めて種族・タイプ分類を行うことがわかった。現在データの詳細解析を進めている。 また、その他の観測領域である銀河中心方向や系内大質量星形成領域の同様の観測結果については詳細解析が終わりつつあり、その結果をまとめた論文作成を進めている。これら成果については学会や研究会などで学術発表を行っている。 この研究計画は可能な限り広い領域の観測サーベイを必要としているため、引き続き国内外での観測を継続している。前述のminiTAO望遠鏡をはじめ、国内ではぐんま天文台の150cm望遠鏡+近赤外線カメラでの観測を行う。さらに本研究で発見されたこれまでカタログ化されていないウォルフ・ライエ星の候補天体については分光観測を行うことで、その種族・タイプの決定のための分光観測も提案している。これにより、その天体自身の素性ばかりでなく、クラスターや星形成領域全体の誕生・進化の解明のための情報となりうることが期待される。
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