研究課題
本研究は、有効温度が極めて低く、恒星と惑星の中間状態にある褐色矮星大気の物理的・化学的状態を、赤外線天文衛星「あかり」によって世界で初めて得られた近赤外線分光観測データを鍵として、大気モデルの構築・改良を通じて理解しようとする試みである。計画最終年度である本年度は、これまでの研究成果を精査・検討したうえで、以下の3つにまとめ、発表した。1. 「あかり」のスペクトルに見られる分子吸収バンドの振る舞いについて、単独星と考えられる褐色矮星16天体のデータに対し、理論大気モデルを用いて定量的な評価を行った。その結果、一酸化炭素の存在量が常に熱化学平衡から逸脱していること、メタン分子がL5型から見られること、ただしその強度は有効温度のみでなく表面重力、ダストの消失温度にも関係することなどが明らかになった。本成果を、The Astrophysical Journal 2012年12月1日号にて発表した。2. 同じ16天体について、大気モデルと既知の距離から半径を導出し、スペクトル型(有効温度)に対する傾向を定量的に調査した。その結果、有効温度1700 K程度の晩期L型~早期T型で半径が最小になること、またその値が褐色矮星の進化理論モデルから予測されるものよりも小さいことを発見した。本成果は、The Astrophysical Journal 2013年4月10日号にて発表された。3. 一昨年度発見した、二酸化炭素分子の吸収バンドの強度(=分子の存在量)を炭素および酸素の元素組成量をパラメータとして説明するアイデアを拡張し、ダストを構成する元素など、より様々なパラメータを変化させた場合の振る舞いを調べた。結果として、炭素+酸素の組み合わせが最も良く観測を説明出来ることを確認した。このことは、褐色矮星の形成過程に対する制限となる。現在、結果を発表するための準備を進めている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Astrophysical Journal, 767, id.77
巻: 767 ページ: 77
DOI: 10.1088/0004-637X/767/1/77
The Astrophysical Journal
巻: 760 ページ: id. 151 (17pp)
10.1088/0004-637X/760/2/151
Publications of The Korean Astronomical Society
巻: 27 ページ: pp. 183-184
10.5303/PKAS.2012.27.4.183