これまでの先行研究で超対称性の格子上での定式化の提案を行った。この定式化はリンクアプローチと呼ばれ広く専門家の間で受け入れられたが問題点も指摘され、我々はこの解決に努力してきた。その結果この定式化はホップ代数の下での対称性という新しい代数構造が背景に有り、差分作用素にグレードが必要であることも明らかになってきた((ref1)。これ等の結果を背景に非可換性を本格的に取り入れた格子上での定式化を完成させる事、或いはこの定式化と同等で別の定式化を発見する事が新たな目標になり、その後これを実現する新たな定式化を発見した。 低次元での格子超対称性を詳しく調べる事により格子超対称性を厳密に保つ新しい定式化を発見し上記のリンクアプローチとの関連も明らかになってきた。この定式化は運動量空間で定式化されたもので、座標空間ではマイルドな非局所性が現れ新しいタイプの積を導入する事が出来、その積の上で超対称代数が厳密に保存されるという性質を持っている。運動量空間で厳密に超対称性が保たれる為にこれまでの超対称性の定式化の視点と少し異なるが、厳密に超対称性が保たれる事は変わらない。初めにその本質を見抜く為に1次元の定式化を完成させたが、2次元に拡張される事も明らかに成り更に格子上でのカイラル条件の課し方も明らかに成り、広い範囲の応用が有る事が明確になってきた。高次元への拡張及びゲージ理論への拡張は重要なテーマであるが、ゲージ理論への拡張の見通しが立ってきた。この定式化と我々が以前に提案したリンクアプローチの定式化との関連も指摘し、代数構造の相似性から局所性と非可換性が対応しており同等の理論である可能性を指摘した。これまで30年以上、微分差要素まで含め厳密に超対称性を格子上で定式化した例は無いが、この定式化はそれを実現している初めての例であると考えている。時間とともに一般に受け入れられると期待している。
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