研究課題/領域番号 |
22540261
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河本 昇 北海道大学, -, 名誉教授 (50169778)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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キーワード | 格子超対称性 / 超対称ヤング・ミルズ理論 / 格子重力 |
研究概要 |
本研究テーマに対して、これまで10年間のイタリアの D'Adda 氏のグループとの共同研究により二つの格子超対称性の提案を行った。一つは差分の持つライプニッツ則の破れの構造と同様の構造を超対称電荷にも仮定して2次元N=2のベス・ズミノ・理論、超対称ヤング・ミルズ理論、3次元のヤング・ミルズ理論の定式化を完成させた。この定式化はリンク・アプローチと呼ばれホップ代数の意味での厳密な超対称性を保持している事が示された。しかし定式化は非可換性を持つ事から、非可換性を持たない厳密な定式化を模索した。その結果二つ目の定式化として差分がライプニッツ則を破る事実を踏まえ、差分の運動量表示に相当する量が格子運動量として保存する事を仮定し、理論を構築し更にカイラルフェルミオンのコピー問題を避ける為に、半分のサイズの格子を導入し、フェルミオンコピーが超対称パートナーに成る事を踏まえた定式化を提案した。この定式化は格子運動量保存に対応する座標表示の積が普通の積から新たな積を定義する事に対応し、その積の上で超対称性が厳密に保つ定式化である事を明らかにした。この方式により1次元、2次元のN=2のベス・ズミノ模型の定式化を行った。 この第二の定式化は積に対しての結合側が破れている事が明らかに成り、ゲージ対称性が入らない限りに於いては、厳密な格子対称性を保持するが、超対称ヤング・ミルズの定式化には適さない事が明らかになった。そこで結合側を満たす様に定式化を修正する方法が明らかになってきた。この定式化は格子定式化にも拘らず、連続理論と同等の性質を持つ事が明らかに成り、パーフェクト・アクショウンの性質を備えている。現在この結果を論文として作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は格子超対称性を完成させ、格子上での重力の定式化に何らかのヒントを得ることを大きな目標と掲げてきた。超対称性の格子上での対称性を保った厳密な定式化に関しては、我々の定式化はほぼ最終的な定式化と考えている。最終段階で新たな定式化に於いて結合側の破れが明らかになってきた。その結果このままでは超対称ヤング・ミルズ理論への拡張は出来ないと考えていたが、結合側を厳密に満たす様に修正するのにどの様にしたら良いか、解決法を発見した。その結果新たに得られた定式化は連続理論と等価性を持つ格子理論であるが、理論が非局所的で有る事が明らかになってきた。それによりこの我々の定式化は格子ゲージ理論で perfect action と呼ばれる定式化と同等でないかと考えている。この様に我々は、格子対称性の定式化の本質的な部分をどの様に定式化するかの機構を明らかに出来る段階に来たと考えている。これらの研究の過程で格子重力への定式化のヒントを得られないかの観点に関して、非可換性が重要な役割を果たしている可能性が、見えてきた。しかし格子重力の定式化との関連の部分に関しては成果が未だ十分とは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
上記の二つ目の格子超対称性の定式化では運動量表示で厳密な超対称性のある定式化の提案を1,2次元のベス・ズミノ模型に関して行ったが、厳密な格子超対称性を結合側を満たす形で拡張できる事が明らかになった事により、3,4次元への拡張も視野に入ってきた。超対称ヤング・ミルズ理論への拡張により超対称性の格子定式化の最終版を提起したい。またこの定式化を座標表示で見直すと、非可換性を導入する必要性が有る事が明らかになってきた。これにより非可換性を持つ場の理論が超対称ヤング・ミルズ理論の格子上での定式化に本質的な役割を果たす可能性が有る事が明らかになってきた。この部分に関して詳しく調べる必要が有る。これは新たな定式化の発展を示唆する認識である。またこの格子上での定式化が higher spin の定式化として知られる重力の定式化と関連する可能性が有ると考えている。この可能性は全く新しい可能性で有り、これから十分調べたい。この様に次の段階に向けての方策が少しずつ見えてきた。
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