研究課題/領域番号 |
22540263
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
諸井 健夫 東京大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60322997)
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キーワード | 超対称模型 / 初期宇宙 / 暗黒物質 / LHC実験 |
研究概要 |
本研究の目的は、加速器実験と宇宙論的観測の結果を総合的に考慮しつつ暗黒物質の正体や起源、さらには素粒子標準模型を超える物理の性質について、新たな知見を得ることにある。特に、様々な実験・観測から得られると期待される結果・データを用い、素粒子標準模型を超える物理の姿を探るとともに、宇宙暗黒物質の性質に対して素粒子物理学的観点からの理解することを目標とする。以上の観点から、平成23年度は以下の二つのテーマについて研究を行った。 第一は、極めて軽いグラビティーノの寿命測定の方法の研究である。極めて軽いグラビティーノは低エネルギーで超対称性が破れる模型において現れると共に、宇宙論を考える上でも重要となる。本研究においては、e^+e^-線型加速器実験およびLHC実験において、インパクトパラメータ情報を用いることでグラビティーノ質量を測定できる可能性があることを明らかにした。 また、将来の重力波観測によって、高エネルギーの物理模型や初期宇宙を理解する手法についての研究も行った。特に超対称模型に基づく宇宙進化のシナリオを考える上で重要な役割を果たすthermal inflationについて考察し、thermal inflation終了時に生成されるdomain wallの消滅に伴い生じる重力波が、将来観測される可能性がある事を示した。また、宇宙初期に相転移が起こった場合、重力波のスペクトルに特徴的なシグナルが出ることを明らかにした。 さらに、最新のLHCの結果は125GeV程度の質量をもつビッグス粒子の存在を示唆している。このことが超対称模型に与える影響を模型構築の観点および宇宙論的観点から議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は、LHC実験、宇宙観測(特に重力波の物理)、そして模型構築と、多岐にわたる観点から超対称模型の研究を進めることができた。特に、LHC実験から125GeV程度の質量をもつヒッグス粒子の存在が示唆されたため、超対称模型に関する理解及び模型の構築を当初の計画以上のペースで進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、LHC実験からさらに多くのデータが発表されると期待されており、それを基に超対称模型の研究を進めていく予定である。また、研究計画の変更や研究を遂行する上での問題点は、特にない。
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