研究概要 |
AMS-02による1-500 GeV/nのエネルギー領域のB/Cの最新の観測結果を再現する拡散平均自由行程の値をKaichnan, Kolmogorovの星間空間の乱流モデル、およびBohmモデルについて求めた。この際計算値を1 GeV/nでのAMS-02の結果に規格化した。この規格化は、1 GeV/nでのsolar modulationの影響が、平均場近似では5%以下と見積もられるからである。その結果AMS-02のB/C比の観測結果はKraichnanのモデルにより最も良く再現されることを確認した。 代表的二つの規則的銀河磁場モデル、ASS(axisymmetric spiral), BSS(bisymmetric spiral)磁場中でのドリフト運動が、源である超新星から太陽系に到達する宇宙線の伝播に及ぼす影響を調べた。太陽系内での惑星間磁場中のドリフト運動が太陽変調現象、特に電荷依存性の22年周期現象に決定的な影響を及ぼすのに対し、これら二つの規則的銀河磁場中ではドリフト運動の影響は、予想に反して大きくないことを突き止めた。これは特徴的拡散距離を1 k pcと仮定し、拡散の平均自由行程をB/Cの知見から得られた値を用いた拡散速度の方が、規則磁場中でのドリフト速度の100倍以上と予想されることから定性的に理解される。またこの一連のシミュレーションに基づいた考察を進める中でASS, BSSモデル磁場は、ともにその勾配がゼロでない(divergence freeでない)こと、すなわち物理的に許されないことに気がついた。 超新星残骸で加速された宇宙線のエネルギースペクトルが、地球近傍で観測される宇宙線のエネルギースペクトルよりかたい原因が宇宙線の再加速にあると仮定したときの、再加速エネルギーの解析解を求めた。
|