研究課題/領域番号 |
22540265
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 裕介 筑波大学, 数理物質系, 講師 (60322012)
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キーワード | 格子理論 / smearing / 非摂動論的なくりこみ / SF scheme / 改良作用 |
研究概要 |
本研究の第一の目的は、Schroedinger functionalを主軸にして、三つのクォークを含んだ格子上のQCDにおける各種の重要な物理量を非摂動論的に繰り込むことにある. Schroedinger functional schemeにおいては、step scaling functionを用いて、各種の物理量の繰り込み群の流れを非摂動論的に追跡できるのであるが、このstep scaling functionを格子上で求めることから、その格子間隔依存性を小さく保つ必要がある.本研究では、格子上で採用する作用の改良により、この要求に応えようと目論んでいる。作用の改良に関しては従来からのO(a)改良に加えて、近年ではsmearされたgauge linkを持つDirac operatorが注目を浴びている。格子間隔依存性を小さく保つという本研究の目的に対してもうまく働くのではないかと期待されている。 昨年度は、smearingを導入したクォーク作用の予備的な調査を行った.特にsmearされたgauge linkを持つDirac operatorに対して、本研究に用いるべきO(a)改良されたクォーク作用の具体的な形を求めることをまず第一の目標とした。特に格子上のDirac operatorの内、 ・hopping termのgauge linkのみをsmearしたクォーク作用 ・hopping termとclover termの両方をsmearしたクォーク作用 について、O(a)改良のためのclover項の係数及び、零質量に相当する質量パラメータの測定を行った.その結果、後者の作用においては、二つのパラメータに対する非摂動論的な補正の効果が小さく抑えられることが判明した.その一方でHMCに用いられるクォークForceの大きさは期待したほど小さくは抑えられていないことが判った。この点からはsmearingの種類を変えた調査の必要性が示唆される。 また、これと並行してΔS=-1、ΔI=1/2 4 フェルミ演算子の摂動論的なくりこみを完了された.特に4フェルミ演算子のon-shell O(a)改良のための係数を世界で初めて計算した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
smearされたgauge linkを持つDirac operatorの導入は格子QCDの数値計算の分野では必須であると考えられている。この点に優先的に取り組んだ点は、研究の順序としては正しいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、Schroedinger functionalに対して各種smearingの本格的な導入を行い、clover項に対する非摂動論的な補正を確定させる予定である。これにより、非摂動論的に改良されたクォーク作用を与えることが出来る。この作用は大規模数値シミュレーションで用いられる予定である。smearingを導入した作用には、格子間隔の他にsmearingを適用する典型的な長さというもう一つの物理的なスケールが導入される。このもう一つのスケールが物理用に与える悪影響に関してはあまり知られていない。そこで次の目標として、smearingが物理量に対して与得る悪影響に関する調査を行う。 また、これと並行して4フェルミ演算子の非摂動論的な繰り込みにも取り組む。
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