研究課題/領域番号 |
22540267
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川崎 雅裕 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50202031)
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キーワード | 宇宙論 / アクシオン / 位相欠陥 / 素粒子的宇宙論 / ドメイン・ウォール / インフレーション宇宙 |
研究概要 |
・アクシオンモデルにおけるスカラー場の宇宙論的進化 素粒子の強い相互作用におけるCPの問題を解決するPeccei-Quinn機構に現れるアクシオンは暗黒物質の候補としても注目されている。アクシオンモデルでは宇宙初期にコスミックストリング及びドメイン・ウォールが生成され、それらはアクシオンを放出しながらエネルギーを失っていくことが知られている。平成23年度は特にドメイン・ウォールの宇宙論的進化を数値シミュレーションを用いて詳しく調べドメイン・ウォールからのアクシオン放出スペクトルを定量的に評価した。さらに、この結果を用いてPeccei-Quinnスケールに対する厳しい制限を得た。また、アクシオンモデルを超対称化した超対称アクシオンモデルにおいてインフレーションが自然に実現し、アクシオンのスカラーパートナーのスアクシオンの崩壊によってグラビティーノなどの宇宙論的に問題となる粒子が薄められ、観測と矛盾しないシナリオを構築することができることを示した。 ・宇宙初期におけるQボール生成 超対称性理論において、宇宙のバリオン数を生成する機構として有力視されているアフレック・ダイン機構に伴って生成されるノントポロジカル・ソリトンであるQボールについて、それが宇宙のバリオン数と暗黒物質の両方を説明する可能性を調べた。ゲージ相互作用によって超対称性の破れが伝わるモデルでは一般にグラビティーノが最も軽い安定な超対称性粒子となり暗黒物質の候補となることに注目して、Qボールの崩壊からバリオンと共に生成されるグラビティーノとニュートラリーノの存在比、及び崩壊が元素合成に与える影響を評価し、Qボールから作られたバリオンが宇宙のバリオン数を説明し、同時にグラビティーノが宇宙の暗黒物質になるシナリオが存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的にある位相欠陥からの重力波の放出のスペクトルを定量的に求めることに成功し、Qボールの宇宙論的進化についても当初の目的をほぼ達成した。アクシオンについてもそれに関係した位相欠陥の進化を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はプランク衛星による宇宙背景放射の非等方性に関する新たな観測データが発表される予定であるので、それに向けてアクシオン場の等曲率揺らぎの解析などを進めていきたい。
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