2011年度には、1)アノマリーについての理解を深め、また、2)ゲージ対称性を尊重しながら、くりこみ群のフローの解析を行う可能性の検討を始めた。後者は、五十嵐の他に、ハイデルベルク大学のPawlowskiを含めての共同研究として議論を開始している。 1)対称性を持つ場の理論についてはマスター方程式が成立する。カイラルなゲージ論についてマスター方程式を書き下すと、アノマリーがその破れとして現れることが分かる。これは、運動量切断をゼロに持っていったときに、ジン=ジュスタン方程式の破れに対応するはずだが、その極限についての理解だけが十分にはできていない。 2)厳密くりこみ群では、ウィルソン作用と、それをルジャンドル変換した1PI作用(effective average action)が用いられ、系の対称性を見るには前者が、数値計算などの具体的な計算には後者が適していると理解されている。後者では、理論の対称性を表す式が複雑で、この式を利用することには期待が持てない。一方で、二つの作用の間には割合分かりやすい関係のあることが五十嵐と石掛の論文で示されている。最近、その関係を汎関数積分を用いて簡潔に書き下すことができた。この両者の関係を利用して、対称性をウィルソン作用を用いて議論し、そこで得た関係式を1PI作用に反映させて、フローの方程式を考えることはできないか、というのが現在検討していることである。 さらに、これまでの研究成果が一定の評価を受け、京都のくりこみ群に関する国際会議と、立教大学で開催された研究会で招待講演を行った。
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