研究課題/領域番号 |
22540271
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 治輔 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40211213)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フレーバー対称性 / ニュートリノ / 暗黒物質 / 超対称性 |
研究概要 |
低エネルギーフレーバー対称性のある超対称模型の検証可能性について総合報告を行なった(Fortsch.Phys.)。特に、フレーバー対称性を課すと複数のヒッグス場の導入が必須となり、電荷は変わらないがフレーバーが変わる素粒子の反応(FCNC反応)の大きさが実験の制限を越えてしまう問題が生ずる。この問題を緩和するために、フレーバー対称性はどのような役割を果たしているかに焦点を当てて報告をまとめた。さらに、フレーバー対称性のために複数の暗黒物質が存在する系についての研究を新たに展開した(PRD,JHEP)。特に、論文(JHEP)では、標準模型のエネルギースケールをカイラル対称性の動力学的破れを使って説明する模型を構築し、動力学的破れのために存在する(疑)南部ーゴールドストーン粒子が現実的な暗黒物質の候補になりうるかを調べた。この論文は、今後の研究の方向を決めるうえで、重要な位置をしめることになると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究によって、将来クォークの質量と小林・益川クォーク混合行列が格子QCDやSuperKEKB等で更に精密に測定されれば、低エネルギーフレーバー対称性は検証可能であることを明らかにした。また、暗黒物質の質量と中性子の電気双極子モーメントが、B中間子におけるCPの破れの大きさと密接に関連していることを見いだし、LHCb等でBs中間子におけるCPの破れが高精度で測定されれば、ここでも低エネルギーフレーバー対称性は検証可能であることを示した。さらに、フレーバー対称性、暗黒物質、ニュートリノ質量と混合の関係についての研究に発展することができ、当初の計画を越えた方向に展開しているといえるので、「当初の計画以上に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から、フレーバー対称性のおかげで複数の暗黒物質が存在する系についての研究を新たに展開している。 素粒子の標準理論を古典的にスケール不変な理論に拡張することによって標準理論のエネルギースケールの起原を説明する試みが提案されている。この模型では、標準理論の裏側(hidden sector)でカイラル対称性とスケール不変性を自発的に破りエネルギースケールを生成させ、標準理論側に伝達する機構が備えられている。この模型はフレーバー対称性のために複数の暗黒物質が存在してる系となっており、今年度は、この模型のフレーバー対称性と暗黒物質の関係をさらに深く理解する計画である。従って、最終年度は研究対象の重みをフレーバー対称性から標準理論のエネルギースケールの起原の理解へと移すことを目論んでいる。また、 今年6月17日から21日まで英国 Sussex大学で開催される国際会議「FLASY 2014 - Fourth workshop on flavour symmetries and consequences in accelerators and cosmology」での招待講演を依頼されており、これまでの研究結果を発表する予定である。
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