研究課題/領域番号 |
22540272
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川村 嘉春 信州大学, 理学部, 教授 (10224859)
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キーワード | 余剰次元 / 素粒子 / 統一理論 / 超対称性 / 超弦理論 |
研究概要 |
本研究の目的は、高次元時空に基づいて素粒子の性質や法則を解明することにより標準模型を超える現実的な理論を発見し、宇宙の謎を解き明かすことである。 研究計画の1つとして「余剰空間を有する時空上で標準模型を超える現象論的に優位な模型の構築とその起源の探究」を掲げた。これに対して、オービフォールドを余剰空間として含むゲージ理論に基づいて、標準模型を超える物理として有望な超対称性とその破れの機構について時空構造の拡張という観点から探求を試みた。具体的には、「超対称性の破れの機構は何か」、「TeVスケールにおける超対称性の破れを如何にして実現するか」という問いかけに対して、従来、提案されていないような答えを与えることを目標とした。 研究成果として余剰次元内に超対称性を極めて弱く破るようなエキゾチックなU(1)対称性を導入することにより,その力学的な整列を通して超対称性のソフトな破れが我々の4次元の世界に発現するような機構を具体的な模型と共に提案した。また、同様の機構を通して、ヒッグス粒子に関する超対称性を有する質量パラメータであるμパラメータも現象論的に有意な値で生成されることがわかった。導入されるU(1)対称性に「エキゾチック」という形容詞をつけたのはその特異な性質に起因する。それらを列挙すると「U(1)対称性の固有状態と余剰次元に関する境界条件の固有状態が同一ではない」「標準模型の粒子のスーパーパートナーはゼロでないU(1)チャージを有するが、標準模型の粒子は中性である」「スーパーパートナーのU(1)チャージの値は極めて小さい」などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現実的な理論の条件として、電弱対称性の破れのスケールが微調整なしに導かれることを挙げることができる。これを実現する有力候補は超対称性である。実験により超対称性は破れていることが示唆され、様々な超対称性の破れの機構が提案されている。本研究では時空構造の拡張により従来の理論では実現しないような超対称性の形態やその破れの機構を発見することを目標とした。実際、4次元時空の理論では実現しないような超対称性の破れの機構およびμ項の生成機構を見つけた。このように目標に対して一定の成果が得られたため上記のような評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
「なぜ、CP不変性は強い相互作用においてよく保存しているのか?(強いCP問題)」、「電弱スケールの起源は何か?量子補正の下での安定性を保つ機構は何か?(自然さの問題)」、「なぜ、重力がゼロの極限で時空はミンコフスキー空間なのか?」、「暗黒物質や暗黒エネルギーの正体は何か?」、「どのようにして、宇宙が誕生したのか?」などの謎に対して、余剰次元、超弦理論やM理論の研究成果や未知の概念に基づいてさらに考察を深める。
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