本研究の目的は時空構造の拡張(余剰次元の導入など)により標準理論を超える素粒子の基礎理論を発見し、素粒子や宇宙に関する謎を解き明かすことである。 研究計画の1つとして「余剰空間を有する時空上で標準理論を超える現象論的に優位な模型の構築とその起源の探究」を掲げた。具体的には「なぜ、3世代の物質粒子が存在するのか?」という謎に関して、前年にオービフォールドを余剰空間として含むSU(N)ゲージ群を有する6次元ゲージ理論に基づいて3世代の物質粒子が統一的に理解される模型を多数発見した。今回、これらの模型の特徴の1つである「世代数は(標準理論のゲージ群を壊さないような)ウィルソンライン位相の選び方に依存しない」に注目し、その理由を理論的に探究した。その結果、これらの模型の背後に余剰次元に関する量子力学的な超対称性が潜んでいて、世代数をWitten indexの対応物として捉えることができた。 研究計画の1つとして「余剰次元や未知の概念に基づいて宇宙の誕生・進化・構造に関する謎に挑む」を掲げた。具体的には「インフレーションの起源は何か?」という謎の解明に向けて、U(1)ゲージ場や重い質量を有するフェルミオン場を含む5次元の重力理論に基づいて理論に含まれる樹木レベルで質量ゼロの2種類のスカラー粒子(レィデオンとウィルソンライン位相)に関する有効ポテンシャルを導出し、その安定性を調べた。その結果、ポテンシャルが最小値を取る場の空間上でレィデオンとウィルソンライン位相が有限な真空期待値と質量を獲得することがわかった。さらに、インフラトンポテンシャルとして機能する可能性を指摘し、実際にウィルソンライン位相をインフラトンの主成分とした場合、宇宙論的な観測値と整合するインフレーションが起こることを見つけた(この研究に関する論文はarXiv:1504.06905に掲載されている)。
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