素粒子め標準模型の超対称性への最小限の拡張(最小超対称理論またはMSSM)は標準模型にある"自然さ"の問題を解決する有力な理論として非常に研究されている理論であり、稼働を再開したLHC実験で検証がなされる可能性がある。この枠内でも、我々が指摘した、ヒッグス粒子が現在の標準模型ヒッグス粒子の制限(114GeV)より軽いシナリオはあまり研究されていない領域なので、それを解析した。このようなシナリオを実現するためには比較的軽い超対称粒子を予言するために、様々な実験からの制限を考慮する必要がある。平成22年度の研究では特にB物理からの制限の精細を調べた。フレーバー物理を議論するときには理論のフレーバーの構造を仮定する必要があるが、ミニマルフレーバーの破れを仮定すると、B_s→μ^+μ^-、B→X_sγ、B^-→τ^-νなどの現象がすでに強い制限を与えることを見た。特にB_s→μ^+μ^-、B→X_sγ過程は理論のパラメーターであるtanβやμパラメーターの符号に強い制限を与えており、こり過程の将来の実験的改良はこのシナリオに大きなインパクトを与えるだろう。B^-→τ^-νは実験で標準模型の予言からのずれが指摘されているが、このシナリオではそれを説明するのは難しく、このシナリオに制限を与え始めていることを見た。B物理からの制限を満たそうとすると超対称粒子のストップが軽くなる傾向があるので、これをLHCで検証できるかを調べる研究に発展させていきたい。
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