研究課題/領域番号 |
22540273
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
戸部 和弘 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (20451510)
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キーワード | 超対称性 / ヒッグス粒子 |
研究概要 |
平成23年度は、LHC実験、Tevatron実験などで実験研究が進みヒッグス粒子のヒントとなる事象も報告されている。現在までの報告によると質量が125 GeVあたりにヒッグスシグナル的な事象が観測されており、近い将来にヒッグス粒子が発見され、その質量が確定されることが期待されている。このことから、本研究課題である超対称性標準模型における軽いヒッグス粒子が存在するシナリオも、非常に制限される可能性が分かった。このシナリオでは標準模型のヒッグス粒子と同じようにゲージボソンと相互作用をするものは、重い方のCP寓な中性ヒッグス粒子であり、その質量が125 GeVとなるのは比較的容易に説明できることがわかる。しかし、この重い方のヒッグス粒子とフェルミオンとの相互作用は、標準模型ヒッグス粒子のものと比べて拡張されるために、このヒッグス粒子のLHC実験での生成や崩壊は、標準模型ヒッグス粒子のものと、大きく変わってしまう可能性があり、その整合性を現在解析中である。平成24年度は、LHC実験がさらに進展して、ヒッグス粒子の発見が期待されるので、そこでのヒッグス粒子の生成断面積、その崩壊パターンの情報から、このシナリオに、非常に重要な制限をあたえられることが期待される。それによって、どのような理論領域が許されるか、どのような模型への拡張が好ましいのか、などの方向性を明らかにして行きたい。 さらに、ミュー粒子の異常磁気能率の精密測定実験から、標準模型を超える物理の示唆が以前から報告されている。そこで、その理論はどのようなものであるべきかを研究し、超対称標準模型との比較を行い、どのような理論領域が好ましいのかを研究した。今後もこのような方向からも研究を発展させていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHC実験が急速に進展し、ヒッグス粒子の質量や相互作用の制限も厳しくなりつつある。この研究で解析している超対称性標準模型で軽いヒッグスが存在するシナリオで、現在LHC実験で示唆されているヒッグス粒子質量を説明するのは比較的容易であることはわかってきたが、LHC実験で報告されているヒッグス事象との整合性は現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はLHC実験におけるヒッグス粒子探索で、ヒッグス粒子発見も期待されている。そのことから、超対称性標準模型のシナリオは一般的に、特別な理論のパラメーター領域へと制限が付く可能性がある。本研究課題での、比較的軽いヒッグス粒子があるシナリオでも、LHC実験で観測されるヒッグス粒子の質量や生成断面積、さまざまなモードでの崩壊率の情報などから、実験と整合性のあるパラメーター領域を非常に制限できることが期待できる。よって実験結果を早急に理解して解析する事が重要である。そのような解析を通して、このシナリオが本当に実現しているのか、それとも拡張されるべきなのかを明らかにして、真の標準模型を超える理論の方向を探りたい。
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