LHC実験で、とうとう質量が約126 GeVあたりに標準模型のヒッグス粒子らしき新粒子の発見がなされた。その粒子のLHC実験での生成や崩壊過程の詳細な解析もなされつつあり、今のところ、標準模型ヒッグス粒子と矛盾のない結果となっている。ただ、ヒッグス粒子が2つの光子に崩壊するモードでは、途中ATLAS実験、CMS実験の両方がイベントの超過を報告したりして、まだ新物理の効果の入る余地があり、その可能な新物理の効果を解析した。最新の結果では、まだATLAS実験では大きな超過が許される状況のように見えるため、今後のさらなるデータを見極める必要がありそうである。 最小超対称標準模型(MSSM)は約126 GeVというヒッグス粒子の質量を説明するために、非常にパラメータ領域が制限され、さらに軽いヒッグス粒子シナリオは、観測されたヒッグス粒子の生成や崩壊からも、非常に制限を受ける結果となった。さらにLHCb実験でBsメゾンのミュー粒子と反ミュー粒子への稀崩壊現象が観測され、この結果が標準模型と非常に無矛盾なものであるために、MSSMの軽いヒッグス粒子シナリオは非常に制限を受けることが分かった。他のB物理の観測量なども考慮すると、MSSMで非常に軽いヒッグス粒子を実現するには、パラメータのチューニングが必要である。 LHC実験はデータを蓄積し新物理の探索も進んでいるが、残念ながらヒッグス粒子以外の新物理の明らかな兆候はまだ見つかっていない。ただ、ミュー粒子の異常磁気能率(muon g-2)の実験が標準模型の予言値と食い違っていることが報告されており、これを説明する理論を解析した。これを説明しようとすると、比較的軽い新粒子の存在が期待されるが、低エネルギーの実験などとまだ無矛盾であり、今後LHC実験で、弱い相互作用を通じてこれらの新粒子を生成する過程を探索することが重要であることを指摘した。
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