研究課題/領域番号 |
22540275
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
延與 佳子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40300678)
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キーワード | 原子核構造 / 不安定原子核 / クラスター / 分子動力学 |
研究概要 |
微視的数値計算の一つである反対称化分子動力学法を用いて原子核の構造の理論研究を行った。主に軽い安定原子核および不安定原子核の基底・励起状態の構造を調べ、クラスター構造の解明を行った。9Liにおいては、t-6Heクラスターの発達した構造が励起状態に現れる可能性を理論的に示唆した。この状態は10Beの第二0+状態に知られているα-6Heクラスター構造と類似した状態で、大きなprolate変形をもつためにK=1/2-の回転体を形成することを示した。9Li励起状態におけるクラスター励起状態は、triton粒子を放出して崩壊する準安定状態で、連続状態との結合を調べ仮想的なポテンシャルの導入するなどの方法により、崩壊に対する不安定性を評価した。 またベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)同位体において基底状態および励起状態に見られるクラスター現象を研究した。中性子過剰Be核においては、N=8の魔法数が消失する現象(魔法性の消滅)が知られている。その要因として、Be核における2つのαクラスター芯の形成の重要性が指摘されてきた。AMDを用いた理論研究により、これまで11Beや12Beにおける魔法数の消滅を説明することに成功しているが、本研究では同じ手法(AMD法)を用いて13Beの構造を調べ、魔法数の消滅が起こるかどうかに焦点をあてて研究した。AND法で13Beの波動関数を求めた結果、13Beの多くの状態で2つのαクラスター芯が形成されることが確認できた。また、得られた状態の解析により、異常な中性子配位をもつ状態が低エネルギー近傍に縮退して出現するという非常に興味深い結果が得られた。この結果により13Beにおける魔法数の消滅が理論的に示唆された。この現象には、2αクラスターの発達が重要な役割を果たしている。発達したクラスター構造で生じる大きな内部変形により、これらの状態は回転体を形成すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラスター励起状態の理論的探索を行い、様々な不安定核でのクラスター状態を発見および予言することに成功した。非常に高い励起エネルギー領域に現れるクラスター励起状態について、新しい理論解析の手法を開発中で、その手法を用いて粒子崩壊に対する安定性を評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、クラスター励起状態に関して、共鳴状態としての性質の研究をさらに推し進め、低エネルギーの原子核反応の研究を行う予定である。他粒子系同士の反応における量子トンネリング現象の理論的扱いには自明でない問題がある。共鳴状態からの崩壊現象と、原子核-原子核散乱の両方の観点から研究を推し進め、クラスター(衝突原子核)の内部励起が量子トンネリングにどのように寄与するかを明らかにしていく。
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