研究実績の概要 |
不安定原子核におけるクラスター励起状態の研究をさらに進めた。クラスターとは空間的な多粒子相関を広く意味し、発達したαクラスターを含む不安定核励起状態の研究を中心的に進めてきたが、αクラスターに限らずtクラスターなど多彩なクラスターを含む励起状態へと研究対象を広げてきた。また、中性子過剰核において空間的に強い相関をもつ現象として二中性子相関の研究をさらに発展させ、中性子ー中性子相関および陽子ー中性子相関(pn相関)を統一的に考え、これらの二核子対が原子核表面で現れる現象について研究を進めた。二核子対にはアイソスピンT=0およびT=1の対があり、これらの競合が近年世界的に注目された話題になっている。この課題に関して、申請者は18Fにおけるpn相関を調べ、核表面におけるS=0(T=1), S=1(T=0)の2核子対のエネルギーや芯からの1体LSポテンシャルに大きく影響をうけることを明らかにし、T=1対では対の相対運動について正パリティのS波状態に負パリティのP波状態が混合したパリティ混合対という新しい物理的解釈を提案した。このパリティ混合対の現象は、18Fに限らず一般の原子核表面で起こりうる普遍的な現象であり、今後の大きく発展しうるテーマである。 また、11B励起状態についてαおよびtクラスターで構成された2α+tクラスター状態をtクラスターの運動様式について解析し、12Cにおける3αクラスター気体状態との類似性と相違点を明らかにした。ボゾン粒子と見なせるαクラスターに対して、他のクラスターと同種でないtクラスターの場合に、粒子交換の観点から新しい解釈を与え、3次元空間での運動を2次元平面に射影した場合には、2α+tクラスター状態と3αクラスター気体が対応づけられることを明らかにした。
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