研究課題
本研究計画では素粒子の強い相互作用に対する量子色力学(QCD)の摂動論的アプローチを用いて、欧州合同原子核研究所(CERN)のラージ・ハドロンコライダー(LHC)や、近い将来に建設が計画されている国際リニアコライダー(ILC)等の先端加速器で到達されるエネルギー・フロンティアでの標準模型および標準模型を超える物理を研究することを目的とする。当該研究計画の初年度である平成22年度は、ILC等において電子・陽電子衝突の2光子過程で観測される仮想光子中のクォーク・グルーオンの分布関数をチャーム(c)・クォークやボトム(b)・クオークの等の重クォークの質量効果をQCDの高次効果をとりいれた枠組みで解析した。特にパートン分布に対する発展方程式を各パートンの質量に依存する初期条件を設定することでその解を求めて、標的仮想光子質量に依存する大きな対数項の再足し上げを行った。これによって、従来よりも摂動計算の精度が高められた。この研究については、基礎物理学研究所で開催された国際シンポジウム「High Energy Strong Interactions (HESI2010)」や日本物理学会2010年秋季大会で共同研究者から報告を行った。また学術雑誌EPJCに発表した。さらに、標準模型を超えた理論として興味を持たれている超対称性理論で登場する、クォークの相棒であるスカラー・クォークとグルーオンの相棒であるグルーイノの効果を考慮した場合の光子構造関数の解析について重粒子質量効果をパートンの発展方程式を用いて遂行した。中間的な結果については、KEKの数値解析グループの会合で報告した。さらに解析の精度を向上させた上で論文としてまとめる予定である。計画の実施にあたっては、国内各地とりわけKEK、筑波大、横浜国大、広島大などの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。
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