[1.]量子重力の普遍的な構造と自然性問題 量子重力によって自然性問題、特に、宇宙項がどのように解決できるかについて考察した。行列模型をはじめとした、重力を含む理論では、低エネルギーの有効作用が必然的に多重局所的なものになることを示し、それから、自然性問題が解決できる可能性を示した。 [2.]IIB行列模型の数値計算と時空生成 IIB行列模型を数値的あるいは解析的に分析することにより、行列模型が超弦理論確かに超弦理論をあらわしており、真空が行列の自由度から発生していることを示した。特に、IIB行列模型のWilsonloopに対するSchwinger-Dyson方程式が弦の場の理論を再現することを、数値シミュレーションを援用して確認した。 [3.]弦理論による宇宙初期揺らぎのメカニズム 弦理論の質量スケールとコンパクト化のスケールが、宇宙初期の指数膨張のハブル定数より、およそ1ケタ小さいという特別なモデルを提唱した。このモデルでは、ドジッター空間中での弦理論の様々なモードの量子揺らぎにより宇宙の指数膨張が引き起こされ、しかも、密度の初期揺らぎも説明できる可能性があることを示した。 [4.]多体系の新しいユニバーサリティの探求と応用 行列模型の固有値分布の相関はランダムネットワークに近いものであるが、そのような系は粘弾性を含む大きなユニバーサリティクラスを形作っていることを示した。そのような系の有効理論は自然な形で計量テンソルを含み、一般座標変換に対して不変な形をもつことを示した。この方向での考察をさらに進め、超弦理論から身のまわりの物質にいたるまでを包括した新しいユニバーサリティの開拓を目指している。
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