トップクォークの質量と、LHC によって測定されたヒグス粒子の質量とをインプットとしてくりこみ群の解析を行い、ヒグスポテンシャルが高いエネルギースケールでどのように振舞うかを調べた。その結果、ヒグスポテンシャルはプランクスケールあるいはストリングスケール近辺で、ほとんど平坦になることを発見した。 次にそのような平坦性の起源について考察した。このような振る舞いは、宇宙項やヒグスの質量の自然性の問題と同じレベルの問題であり、通常の場の理論の立場からは一見不可思議なものである。しかし、超弦の非摂動的ダイナミクスから自然に示唆されるような、時空のトポロジーの量子ゆらぎを考慮に入れると、その結果として自然性やポテンシャルの平坦性が説明ができる可能性があることを議論し、その具体的なメカニズムを示した。 さらに、この事実から、宇宙のインフレーションがヒグス場によって引き起こされた可能性があることや、ダークマターとして最も単純なヒグスポータル型のものを仮定した場合、その質量とトップクォーク質量の間に密接な関係がつくことなど、多くの検証可能な予言がえられることを示した。 以上の考察を一般化し、「低エネルギーの有効作用に現れるパラメーターは宇宙の最終段階のエントロピーを最大にするように選ばれている。」という原理(最大エントロピー原理)が得た、この原理を検証するためには、宇宙の始まりから終わりまでの歴史を知っている必要があるか、くつかのパラメーターは、現在のわれわれの限られた知識の中でも議論できる。具体例として、ヒグスの真空期待値の関数として宇宙のエントロピーを評価し、確かにそれが 200GeV 程度のときに最大になっていることを示した。
|