研究課題/領域番号 |
22540278
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 進 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (80413954)
|
キーワード | 宇宙線 / 宇宙大規模構造 / ガンマ線 / 銀河団 |
研究概要 |
平成23年度は、昨年度から引き続きCTA(Cherenkov Telescope Array)計画におけるガンマ線バースト(GRB)のサイエンス検討グループ・リーダーの任務が増えたため、GRBに関する研究の比重が当初の予定より大きくなった。一方で、CTAを含むガンマ線・X線・宇宙線・ニュートリノ等に関する様々な将来観測計画の詳細について、知識を一層深めることができた。 目標としていた、1)銀河系降着に伴う非熱的放射、2)銀河団ガンマ線放射の統計的性質、3)銀河団ニュートリノ放射、の各課題について総括する。まず1)については、観測されている未同定TeVガンマ線源との関係を議論するに当たって一番の問題点であった、角度サイズの不一致について検討を進めた。high velocity cloud(HVC)に関する最新の電波観測結果をよく調べたところ、角度サイズが1度以下のcompact HVCと呼ばれるものに着目すれば、未同定TeVガンマ線源の全ての性質が説明可能であり、今後の多波長観測によって銀河円盤との相互作用位置の距離を決定することで、これを検証できることも明らかにした。一方で、より大きなサイズのHVCに起因する非熱的放射も起きているはずであるが、このような現象を探すためには、TeVガンマ線より全天サーベイ観測があるGeVガンマ線の方が有利なため、現在、Fermi衛星による公開データを調べながら、対応天体を探査中である。 2)と3)については、Fermi衛星による新たな観測結果として、個々の銀河団からのGeVガンマ線は検出されなかった一方、ガンマ線背景放射については、従来の観測値が修正されるとともに、既知の天体では説明できない謎の成分が残ることが発表された。これを受け、以前の理論予想を修正しながら、銀河団によるガンマ線およびニュートリノの背景放射への寄与を慎重に再検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していなかった任務として、平成22年度からCTA(Cherenkov Telescope Array)計画のガンマ線バースト(GRB)のサイエンス検討グループのリーダーを務めることとなったため、GRBに関する研究が予定より多くの比重を占めることとなった。しかし超高エネルギー物理過程が起きる環境であることは銀河団などと重要な共通点であり、GRBに関する研究であっても、本課題にとって非常に有意義な成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度からMAGIC collaborationに加入したことを受け、MAGIC望遠鏡を用いた新たなTeVガンマ線観測提案を行う予定である。銀河団は、今のところGeVガンマ線領域では検出されていないが、この結果を踏まえ、超高エネルギー宇宙線陽-子・原子核に伴う非熱的放射の可能性を吟味し、新たなTeV観測候-補天体を絞るとともに、ASTRO-H、NuSTARによる硬X線観測にも備える。銀河系物質降着現象による非熱的放射については、現在Fermi衛星による全天サーベイデータを用いてGeVガンマ線対応天体を探査中であるが、北半球における新たなTeV観測候補天体も検討する。
|