研究概要 |
最終年度の平成24年度は、前年度と同様、CTA (Cherenkov Telescope Array) 計画におけるガンマ線バースト (GRB) サイエンス検討グループのリーダーとしての任務があり、結果的にGRBに関する研究の比重が大きかった。しかし、年度の後半は、本研究課題の中核をなす、銀河団における高エネルギー物理過程について、すざく衛星による二つのX線観測結果を軸とし、重要な新成果をまとめることができた。また、MAGIC Collaborationの提携メンバーとして、近傍銀河団のガンマ線観測計画提案に参加し、今後の観測へ向けて展望を議論した。 X線観測による新成果:i) Coma銀河団外縁部の広域観測データを元に、電波レリック放射が見える領域で弱い衝撃波を発見し、そこにおける高エネルギー電子の起源は、既存の非熱的電子成分が衝撃波で再加速されたものである可能性が高いことを明らかにした (Akamatsu, Inoue et al.) 。ii) Fornax銀河団外縁部に存在する電波銀河Fornax Aについて、詳細な広域観測データから、ジェットのローブ領域内に多くの熱的プラズマが混入していることを発見し、電波銀河が銀河団ガスを加熱する際の具体的な物理過程について新たな知見が得られた (Seta, Tashiro & Inoue, PASJ, submitted)。 平成24年度当初の具体的目標としていた二つの課題について:1)銀河団における超高エネルギー原子核起源のX・ガンマ線放射については、第一ステップとして、理論予想が比較的しやすい電波銀河起源の宇宙線を想定した状況設定で、現在詳しい計算を進めている最中である。2)銀河系ガス降着に伴う非熱的放射については、引き続きFermi衛星による公開データを調べながら、GeV帯域ガンマ線の対応天体を探査中である。
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