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2011 年度 実績報告書

クラスター・ガス的状態の普遍性確立の追究

研究課題

研究課題/領域番号 22540280
研究機関大阪大学

研究代表者

堀内 昶  大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (60027349)

キーワードクラスター・ガス / THSR波動関数 / 4αOCM / Hoyle状態 / 単極遷移 / 強度関数 / 共鳴状態 / 複素回転法
研究概要

本研究計画は、原子核構造の全く新しい形態であるαクラスターのガス的な状態が存在することを確立させることを目指すものである。この計画の具体的な研究の中心は^<16>O核において4個のαクラスターよりなるガス的な状態の存在を同定することである。これまで、^<16>O核の4αガス的状態の研究については、四つのアプローチが為されて来ている。第一は、2001年の論文でTHSR波動関数を始めて導入して、クラスター・ガス的状態という概念を始めて提唱した時に4αのガス的状態が4α分解閾値近傍に現れることを実際計算で示したものであるが、その4αTHSR波動関数による萌芽的研究を本格的研究に高めることが第二のアプローチであり本研究計画の重要課題の1つである。前年度に4αTHSR波動関数だけを用いた完全微視的計算で0+状態について研究した結果をPhys.Rev.C誌に掲載した。本年度は得られた波動関数を用いて幾つかの追加計算を行うとともに0+以外の状態の研究も始めた。第三のアプローチは、4αOCMによる計算であって、前年度は以前の計算を改良することによって研究の進展を図ったのであるが、それは具体的には4体系の相対運動の部分波をかなり増加して計算を行ったものであった。今年度は更にその改良の度合いを高め、計算結果の信頼性を高めた。更に正パリティ状態に加えて負パリティ状態の計算も本格的に開始した。これにより0+状態以外の多くのスピン・パリティ状態の研究が進展した。また、4α分解閾値よりもかなり高い励起エネルギー領域の研究も進展した。重要な結果として、3つのαクラスターが^<12>CのHoyle状態を形成して、その周りを4番目のαクラスターがS波やそれ以上の部分波で運動する状態が存在することが前年度予言された。これはクラスター・ガス状態の構造としては自然ではあるが新しいタイプの構造であり、その存否は重要である。本年度は^<12>C (Hoyle)+α構造に加えて^8Be+^8Be構造の存在も予言し、それら2種類の新しい構造の存在の確立を目指して複素回転法を導入した。言うまでもなくこれらの構造の状態は共鳴状態であるために従来の束縛状態近似だけでは不十分であるからである。第四のアプローチは単極遷移の強度関数を計算して実験データと比較する研究である。励起エネルギーで15MeVほどまでの励起関数の実験値は4αOCM計算により始めて見事に再現されることが示された。特に4αガス的状態に対応するピークも良く再現されている。従来の平均場模型による計算がどれも実験の再現に失敗していることに比べると4αガス的状態の存在は強力な証明を得たことになる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

クラスター・ガス的状態の存在を確立することを目的とした計画において、当初に考えたのはボーズ凝縮した状態の確定とそこからのD波励起の発見であった。ボーズ凝縮の確定の課題は達成されて来ているのに加えて、新しいタイプのクラスター・ガスの状態として^<12>C (Hoyle)+α構造の状態と^8Be+^8Be構造の状態の研究が開始されたのが現在の状況である。後者は当初は考えていなかった課題であり、その課題の追究の開始は計画以上の進展といえる。この新しい構造の研究のためにも共鳴状態の適切な取り扱いが必要であり、複素回転法を用いた計算が開始され進展しているが、これは当初の計画よりもやや早目の対応となっている。

今後の研究の推進方策

4αOCM計算を複素回転法を用いて4α凝縮状態とその励起状態の共鳴状態としての扱いを展開する。更に^<12>C (Hoyle)+α構造の状態と^8Be+^8Be構造の状態の研究を同様に推進する。単極遷移の強度関数を励起エネルギー15MeV以上の領域について議論する。また拡張したTHSR関数を用いて4α凝縮状態と^<12>C (Hoyle)+α構造の状態と^8Be+^8Be構造のチャンネルを結合する完全微視的研究の開始を行う。さらに、^<16>O核以外の原子核の研究として、Be同位体の研究の開始を予定する。ガス的状態の研究の手段としてTHSR波動関数を用いて来たが、この関数は^<20>Ne核の基底回転帯の状態の記述にも強力であることが今年度示された。つまりガス的状態と通常のクラスター構造状態の中間的構造の研究に対してもTHSR波動関数は有力である。この事実に基づいて、Be同位体の研究に続いてC同位体の研究の開始も考える。広範な原子核に対しての研究は本研究課題の追求する普遍性の確立にとって必要なことである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Nuclear alpha-particle condensates2012

    • 著者名/発表者名
      T.Yamada, Y.Funaki, H.Horiuchi, G. Roepke, P.Schuck, A.Tohsaki
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Physics

      巻: 848 ページ: 229-298

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Overview on the cluster structure and the alpha condensation2011

    • 著者名/発表者名
      H.Horiuchi
    • 雑誌名

      Acta Physica Polonica B

      巻: 42 ページ: 735-745

    • DOI

      DOI:10.5506/APhysPolB.42.735

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Concluding remarks2011

    • 著者名/発表者名
      H.Horiuchi
    • 雑誌名

      Journal of Physics, Conference Series

      巻: 321 ページ: 012042-012047

    • DOI

      doi:10.1088/1742-6596/321/1/012042

    • 査読あり
  • [学会発表] ^<16>O核におけるアイソスカラー型単極子励起とクラスター構造2012

    • 著者名/発表者名
      山田泰一
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学
    • 年月日
      2012-03-24
  • [学会発表] (3α)-α系の微視的研究(V)2012

    • 著者名/発表者名
      東崎(鈴木)昭弘
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学
    • 年月日
      2012-03-24
  • [学会発表] (3α)-α系の微視的研究(IV)2011

    • 著者名/発表者名
      東崎(鈴木)昭弘
    • 学会等名
      日本物理学会2011秋季大会
    • 発表場所
      弘前大学
    • 年月日
      2011-09-17

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公開日: 2013-06-26  

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