研究課題/領域番号 |
22540283
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
両角 卓也 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20253049)
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キーワード | 素粒子論 / 非平衡の場の理論 / シーソー模型 / レプトジェネシス / レプトン数 |
研究概要 |
宇宙の物質生成の機構の有力な候補であるレプトジェネシスを非平衡の場の理論を用いて研究するために非平衡の場の理論の定式化である実時間形式を用いて、粒子数の時間発展を研究した。 レプトジェネシスの模型であるシーソー模型を扱う準備段階として、より簡単なスカラー粒子からなる模型を研究した。具体的には相互作用による粒子数生成を目標として、重い中性スカラー粒子(粒子数ゼロ)と軽い複素スカラー粒子(粒子数±1)からなる場の理論の模型を用いて、その模型の粒子数生成を研究した。 模型に含まれる重い中性スカラー粒子は軽い複素スカラー粒子と粒子数およびCP対称性を破る相互作用をしている。この模型における粒子数生成の機構はつぎのとおりである。模型では重いスカラー粒子が粒子数±2または0の軽いスカラー粒子対の終状態に崩壊でまる。軽い複素スカラー粒子は質量項で粒子数を破っておりB中間子混合のように粒子数1の状態から-1の状態に量子混合する。量子力学的な考察から、時間に依存した粒子数非対称性が生じることを示せる。 同じ模型を熱的な環境下で研究するために、初期密度行列として粒子数の統計的な期待値がゼロであるような密度行列から始めその後の時間における粒子数密度の生成率を非平衡の場の理論を用いて計算した。熱的環境では粒子数密度の生成率は重い粒子の崩壊による生成過程と逆崩壊を表す消滅過程の差であらわすことができる。生成過程の寄与を知るためにスカラー粒子の初期運動量分布関数に依存する生成率を計算した。各時間の生成率を知るためには、運動量積分をする上で工夫が必要だった。これを粒子反粒子混合の周期程度の長い時間での時間変化を記述するのに適切な近似を用いて、生成率の式の運動量積分をした。この結果、粒子数密度の生成率が粒子数混合の周期を特徴的な時間として振動することを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非平衡の場の理論の基礎的なところを調べていることで進展があった。現実的な模型より、簡単化された模型を用いて調べているため、シーソー模型に関する研究や現象論的な研究に関してはやや遅れているが、手法の基礎的な部分での理解は本年度の研究で進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
非平衡の場の理論の手法に関しての研究が一定程度進んだので、シーソー模型による粒子数生成へ適用することによりにさらに研究を進める。また、単純なシーソー模型だけでなく、模型を広げて、より拡張された理論や統一理論での粒子数生成を研究することによって研究の展開を図る。
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