研究概要 |
本研究の目的は,陽子陽子衝突型加速器であるLHCなどの超高エネルギー加速器において,トップクォーク対生成などの断面積を,特定の模型に依存しない最も一般的な形で計算し,非標準相互作用の存在可能性を探ることである. 我々は,「標準模型の背後にはAというエネルギースケールで特徴付けられる基本理論が存在し,A以下の世界はSU(3)×SU(2)×U(1)という対称性に従う有効相互作用で記述される」という枠組み採用して,そこで導かれる非標準トップ-グルオン結合を含めてトップ対生成断面積を解析的な形で求め,さらにそれに基づいてトップの半レプトン崩壊で生まれる荷電レプトンの運動量分布を与える解析的な式を導出した.これをまとめたのが雑誌論文1である.現在は,そこで得られた結果を用いて具体的なエネルギー分布・角分布・横運動量分布など実際の実験で測定される量を調べている(結果は近々英文論文にまとめる予定). 雑誌論文1を完成した直後にLHCから最初のトップ対生成全断面積のデータが公表された.そこで,このデータを昨年度行った解析に適用したところ,陽子反陽子衝突型加速器(Tevatron)から得られていた非標準トップ-グルオン結合への制限に比べ遥かに強い制限が新たに得られることがわかった.その結果をまとめたのが雑誌論文2である.我々は昨年の解析との関係および掲載までの時間短縮を考え,タイトルを「Addendum to…」としたが,内容的には独立した論文としてのレベルが十分にあると考えている.事実,世界最大のアーカイブであるlanl. arXiv.orgにおいて,審査の上で独立した論文としての登録が認められた(arXiv : 1011. 2655).
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