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2012 年度 実績報告書

高スピン・エキゾチック変形原子核の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22540285
研究機関九州大学

研究代表者

清水 良文  九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90187469)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード原子核高スピン状態 / エキゾチック変形 / 正四面体変形 / 角運動量射影 / パリティ射影
研究概要

本研究の主たる目的は、原子核における未知の高スピン・エキゾチック変形状態を理論的に予言し、新たな興味深い研究対象として分析することである。特に、このようなエキゾチック変形として正四面体変形状態については、通常の回転対称性を破るだけでなく、軸対称性やパリティーといった基本的な対称性を数多く破っており、特徴的な集団回転状態が現れると期待される。このような興味深い回転状態を理論的に研究するために、これまでの2年間で最も一般的な変形をもった平均場状態から量子数射影、特に、角運動量射影とパリティ射影を行う計算プログラムの開発に成功し、昨年度世界で始めて正四面体状態回転バンドの計算に成功した。本年度は、このプログラムの更なる改良により、本格的に正四面体回転バンドの理論的予言を行った。特に、比較的軽い原子核からアクチナド領域の非常に重い原子核にわたって、正四面体変形の2重閉殻原子核をいくつか選んでその性質の分析を行ない、その回転状態がどのように四面体変形の大きさに依存するのかを明らかにし、通常の四重極変形回転状態との類似性や異なった点を詳細に分析した。このような理論的分析は世界で始めてであり、現在論文として投稿中であるが、レフェリーからも高い評価を受けている。また、量子数射影計算の応用範囲は広く、これまでに知られているが微視的な立場からの理論的な分析が難しかった、高スピン・ウォブリング回転バンドやカイラル2重項バンド状態を角運動量射影法により分析を行い、興味深い結果を得ることができた。さらに、変形し対称性を破った原子核における反応断面積の計算を行う際に必要となる、球対称性を回復した密度分布の計算を角運動量射影法を用いて行うなど、多くの応用において成果を出すことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度同テーマで修士論文を書き上げた大学院生が博士課程に進み、研究面で非常に成長したことが本研究を進める上で非常に大きな推進力となっている。また、フランスの共同研究者である J.Dudek 氏のところでの滞在、および、メールによる日常的な議論も役立っている。本研究での最も一般的な対称性を壊した平均場状態からの量子数射影計算は非常に計算コストがかかるが、最初の2年間で新しく導入した計算機を用いることにより効率よく数値計算を遂行できた。また、適宜必要に応じて九州大学大型計算機センターの計算機の短期間の利用も行った。

今後の研究の推進方策

昨年度までに開発した量数射影計算のプログラムを駆使して、本年度は最終的な目的の一つである、正四面体変形エキゾチック回転バンドの研究に着手できたが、正四面体変形は高次の点群対称性を持っており、その表現はボゾン(偶々核)の場合5種類、フェルミオン(奇核)の場合3種類ある。本年度は、このうち最も基本的な2重閉殻原子核に対応する完全対称表現(A1と呼ばれる)に限った分析であった。今後の研究では、プログラムの更なる改良により、他の表現に対応する回転励起スペクトルの性質を調べ、正四面体変形状態のより完全な理論的分析を目指す。それにより、実際に存在するのではないかと期待されている原子核に対するより現実的な理論的予想が可能になり、新しい実験データが出てきた場合に正四面体型変形状態の同定に役立つものと期待される。
また、現実的な場合には純粋な正四面体変形だけでなく、四重極変形や軸対称八重極と同時に変形した状態が現れる可能性もある。最終的にはこのような一般的な場合についても、特に電磁遷移確率の計算などを通して何らかのスペクトルの特徴を引き出すことができるような分析を目指す。
さらに、量子数射影による微視的な立場からの原子核高スピン状態の研究はそれ自身が興味深いものであり、これまで開発してきた道具立てを応用し、より広い範囲での微視的な理論的研究に役立てるつもりである。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Deformation of Ne isotopes in the island-of-inversion region2012

    • 著者名/発表者名
      T.Sumi, K.Minomo, S.Tagami, M.Kimura, T.Matsumoto, K.Ogata, Y.R.Shimizu, and M.Yahiro,
    • 雑誌名

      Physical Review C

      巻: 85 ページ: 064613-1-17

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nuclear prolate-shape dominance with the Woods-Saxon potential2012

    • 著者名/発表者名
      S.Takahara, N.Tajima, and Y.R.Shimizu
    • 雑誌名

      Physical Review C

      巻: 86 ページ: 064323-1-13

    • 査読あり
  • [学会発表] 非軸対称変形核におけるエキゾチックな回転運動の研究

    • 著者名/発表者名
      田上真伍、藤岡雄大、清水良文
    • 学会等名
      日本物理学会第67回秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学
  • [学会発表] 原子核の偏長変形優勢におけるStrutinsky法の巨視的部分の寄与

    • 著者名/発表者名
      高原哲士、田嶋直樹、清水良文
    • 学会等名
      日本物理学会第68回春季大会
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス
  • [学会発表] 変形した不安定核での2中性子相関

    • 著者名/発表者名
      嶋田充宏、田上真伍、清水良文
    • 学会等名
      日本物理学会第68回春季大会
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス
  • [学会発表] 量子数射影による四面体変形核の分析ー四面体群のスペクトルとの比較

    • 著者名/発表者名
      田上真伍、清水良文、J.Dudek
    • 学会等名
      日本物理学会第68回春季大会
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス
  • [学会発表] Exotic shape and rotation at high-spin states

    • 著者名/発表者名
      S.Tagami, Y.Fujioka, Y.R.Shimizu, and J.Dudek
    • 学会等名
      RCNP International Workshop on ``Physics Opportunities using Compton Suppressed Ge Clover Array (Clover12)''
    • 発表場所
      RCNP, Osaka, Japan
  • [学会発表] Application of quantum number projection method to tetrahedral shape and high-spin states in nuclei

    • 著者名/発表者名
      S.Tagami, Y.Fujioka, Y.R.Shimizu, and J.Dudek
    • 学会等名
      Riken International Workshop on ``Computational approaches to nuclear many-body problems and related quantum systems''
    • 発表場所
      Riken, Wako, Japan

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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