研究課題
2核子以上の核子間の相互作用を記述する核子系有効場理論のWilson流繰り込み群の解析について画期的な進展があったので、当初の計画からは多少外れるが、今年度はその研究に多くの労力を割いた。先行研究の繰り込み群の解析においては、パイオンの寄与が低エネルギーにおいても脱結合しないこと、パイオンを含まない理論での繰り込み群とスムーズに連結しないこと、パイオンの交換の効果が、局所的な項(接触項)として繰り込まれていないことなどの問題点があることを指摘した。そして、初めてこれらの問題を解決して明確な物理的描像を持った繰り込み群方程式を得、そのフローの構造を調べた。この研究は、今までこの理論で問題であった特異なテンソルカを矛盾なく取り扱う方法を示した。これは今後の核子系有効場理論の発展において重要な意義を持つ。核子を含むカイラル摂動論の1-ループの近似で、見掛け上対称性を破っている項(ANTs)が現れることを、具体的な計算によって示すことができた。具体的な形が求められたのは初めてである。ANTsが、実際に非線形な対称性を保つのに必要なものであるかを示すためには、Zinn-Justin方程式に基づいた解析が必要である。現在、線形に変換する場に変数変換した場合に対するZinn-Justin方程式は得られているが、非線形な場合については解析が難しく、現在も継続して研究をしている。背景場の方法を非摂動論的繰り込み群に応用する研究は、先行研究を精査している段階で、現在までのところ、具体的な成果は得られていない。
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Physical Review C
巻: C83, No.3 ページ: "034002-1"-"034002-14"