研究課題/領域番号 |
22540287
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小田 一郎 琉球大学, 理学部, 教授 (40265517)
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研究分担者 |
前野 昌弘 琉球大学, 理学部, 准教授 (30222285)
瓜生 康史 琉球大学, 理学部, 准教授 (40457693)
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キーワード | 重力のヒッグス機構 / 有質量の重力子 / 量子重力 |
研究概要 |
本研究の目的は、重力子が質量を持つ場合の重力理論について詳細に調べ、ミクロな素粒子の分野では繰り込み可能でユニタリーな量子重力理論を構成すること、マクロな宇宙論の分野では一般相対性理論が長距離で変更を受けることを用いて、暗黒エネルギーの存在を仮定せずに現在の加速膨張宇宙を理論的に説明することを試みることであった。 まず、小田は2010年に出版された論文の中の最初の論文において、本研究の核心の部分となるであろう重力子に質量も持たせる「重力のヒッグス機構」に関して、新しい理論を構成した。これ以前の研究では、特別な形のポテンシャルにおける重力のヒッグス機構しか知られていなかった。そのため、重力のヒッグス機構が働くのは、宇宙項がゼロや負の場合に限られていた。我々の宇宙は宇宙項は正の小さな値を持つことが分かっているので、宇宙項が正のときの重力のヒッグス機構を構成することは重要な研究であった。私は本論文において、基本となる力学的な自由度として、一般座標変換に対するテンソル場ではなくて、ローレンツ変換に対するテンソル場を採用した。この新しい自由度を考えることで、宇宙項が正の場合も含む一般のポテンシャルを考察することが可能となった。 さらに、2番目の論文においては、1番目の論文で構成された一般化されたヒッグス機構の理論を詳しく調べた。特に、重力のヒッグス機構の理論においては、一般のポテンシャル項を考えるとき、ユニタリー性を破るスカラーモードが出現し、理論の整合性(確率解釈)を破ることがある。本論文においては、1番目の論文で構成された理論では新しい局所的なゲージ対称性が存在するために、ユニタリー性を破るスカラーモードしないことを証明した。 また、研究分担者の瓜生は、磁荷を持ったバイナリーの星の熱力学に関する論文を出版した。この研究は直接的には重力子が質量を持つ場合の重力理論には関係がないが、今後この手法を用いて、重力子が質量を持つ場合の重力理論に存在するブラックホール解の熱力学を研究したいと考えている。
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