研究概要 |
新しい殻模型ハミルトニアンを用いて、原子核での弱過程、すなわち電子捕獲反応、ニュートリノ反応およびベータ崩壊、のより正確な評価を行い、元素合成過程に及ぼす影響の重要性を示した。 fp-殻核、特にNi同位体からの電子捕獲反応の高温、高密度条件下での捕獲率を、新しい殻模型ハミルトニアン(GXPF1J)によって得られたガモフ・テラー遷移強度を用いて評価し、実験のガモフ・テラー遷移強度に基づく捕獲率を58,60Ni核で再現することに成功した。従来の計算からの著しい改善は、新しいハミルトニアンのより広範囲の有効性を示すだけでなく、電子捕獲過程が重要な役割を果たす星の終末期の崩壊過程のより正確な記述への進展の第一歩が得られたことを意味する。 テンソル力の効果を正しく取り入れ、殻進化をより良く記述できる新しいハミルトニアン(SFO、SFO-tls)を用いて、軽核、特に16Oのスピン双極子遷移強度を評価した。従来の計算に比べ強度の分散が大きく、エネルギーの位置の記述もより正確になった。ニュートリノ-16O反応の断面積の評価の改良につながる。この改良は、水を検出器とするニュートリノ反応の評価に重要である。 新しいハミルトニアン(GXPF1J)によるガモフ・テラー遷移強度を用いて、ニュートリノ-52,54Fe反応の断面積の評価を行った。52Feでは特に中性カレント反応断面積が従来のKB3Gハミルトニアンによる評価より増大することを示した。星の中での51V生成率の増大が見込まれる。 中性子数N=126のアイソトーンからのβ崩壊を、改良された殻模型ハミルトニアンに基づき評価した。第一禁止遷移からの寄与の重要性を示し、アイソトーン(N=126)の半減期が標準的な評価より減少することを明らかにした。これらのより短い半減期は、元素合成r-プロセスの合成元素の第三ピークの位置に有意な影響を与えることを示した。
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