研究課題/領域番号 |
22540290
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 教授 (70139070)
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研究分担者 |
本間 道雄 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (40264569)
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キーワード | 殻模型 / ニュートリノ / 電子捕獲 / ガモフ・テラー遷移 / r-プロセス / 第一禁止遷移 / 元素合成 |
研究概要 |
新しい殻模型ハミルトニアンを用いて、元素合成過程に重要な影響を及ぼす原子核での弱過程-ニュートリノ核反応、電子捕獲反応およびベータ崩壊-のより正確な評価を行った。 昨年度の新しいハミルトニアンによるスピン双極子遷移強度の評価改善の達成の成果に基づいて、ニュートリノ-^<16>O反応の断面積の評価の改良を行った。この成果は、超新星ニュートリノのより正確な測定につながり、ニュートリノ振動等のニュートリノの性質を明らかにする研究の発展に寄与する。 我々のグループが開発したモノポール項に基礎を置く殻進化を正しく記述する普遍的な殻模型ハミルトニアンを用いて、ニュートリノ散乱の標的として広く使用される^<40>Arのガモフ・テラー遷移とニュートリノ反応断面積の評価を行なった。従来より大きなガモフ・テラー遷移強度と反応断面積が得られた。 今回得られたガモフ・テラー遷移強度は、最近の(p,n)反応による遷移強度分布を比較的良く再現することができる。 また、^<56>Feからのニュートリノ核反応の断面積の精度を上げた評価を行い実験値と比較することによって、鉄領域の核からのニュートリノ反応断面積は我々の方法(殻模型+RPAのハイブリッドモデル)で十分精度良く求められることを明らかにした。 Ni同位体、特に^<56>Ni、^<55>Niからの電子捕獲反応の高温、高密度条件下での捕獲率を、新しい殻模型ハミルトニアン(GXPF1J)によるガモフ・テラー遷移強度を用いて評価した。GXPF1Jを用いて得られるガモフ・テラー遷移強度は、最近の米国MSUでの(p,n)反応により実験値を良く再現できることが明らかになった。新しいハミルトニアンの有効性を示すだけでなく、電子捕獲過程が重要な役割を果たす星の終末期の崩壊過程のより正確な記述への進展が、昨年度に引き続きさらに得られたことを意味する。CO、Mn 同位体でも新しい捕獲率を評価した。 中性子数N=126のアイソトーンおよびその近傍核からのβ崩壊を、改良された殻模型ハミルトニアンに基づき評価した。特に、第一禁止遷移による半減期の弱相互作用の軸性ベクトル定数およびベクトル定数の核内媒質の効果によるクェンチングの割合(減少率)への依存性を調べた。第一禁止遷移におけるこれらの定数の減少率はこれまで良く調べられてこなかった。大きな減少率の場合でも、アイソトーン(N=126)の半減期が標準的な評価より短いことに変わりはないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
種々の原子核からのニュートリノ反応断面積を、新しいハミルトニアンやモノポール項に基礎を置く普遍的な相互作用を用いて評価することに成功した。また、星の中でのNiアイソトープからの電子捕獲率を従来より高い精度で評価することに成功し、Co、Mn等の他のアイソトープへの研究の拡張も順調に進んでいる。さらに、元素合成r-過程に重要な中性子数126の原子核のβ崩壊の半減期を、第一禁止遷移も含めて殻模型で初めて評価し、従来の標準的な値より短いことを明らかにした。これは当初の計画以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
新しいハミルトニアンに基づく天体核での原子核の弱過程(ニュートリノ反応、電子捕獲反応、β崩壊)の研究を引き続き推進する予定である。中重核の研究は、計算の配位空間を拡張するのは容易でなく、短期間に十分な進展が得られるか不透明なので、軽核、閉殻に近い原子核の研究の精度を上げる方向に重点を置く予定である。
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