研究概要 |
近年の観測機器の進歩に伴い宇宙の研究は飛躍的に進歩を遂げ、ビッグバン宇宙論宇宙に関しては多くのことが明らかにされてきた。その一方で、ダークエネルギーや高エネルギー宇宙線の謎は従来のアプローチでは解決が難しく、重力を含む自然界における基本法則の根幹にも関わる重要な問題を提起している。また、ミクロ世界における重力は素粒子統一理論をもとにブレイン宇宙などの新しい宇宙像を提案しており、その検証が注目されている。このように宇宙を支配する力である重力の基礎研究はミクロとマクロの両極端で新しい展開を見せている。そのような段階において、宇宙の未解決重要問題を重力物理学の立場から系統的に解析し、その総合的な理解と基礎物理学として重力の研究を行うことを目的とする。 本年度は、過去2年間に得られた研究成果を総合的に解析し、次の2つの課題(A), (B) に関しては、最も有望だと考えられるアプローチに基づき研究を遂行した。 (A)ダークエネルギーの重力起源説としてさまざまな重力理論が提案されているが、本年度はその中でも一般相対性理論の最も自然な拡張であるmassive gravityおよびその拡張であるbigravity理論に着目し、その宇宙論的応用、特に非等方宇宙モデルについて考察し、非等方性が一般相対性理論の場合よりより遅く減衰し、理論の観測による検証可能性を指摘した。 (B)ブレインを基礎にした初期宇宙モデルの解析を行った。特に、インフレーションの起源を明らかにするため自己重力を考慮したモデルの構築を考える。これまでに、ブレインの自己重力を考慮した時空モデルで、時間依存したブラックホール解やブレイン解の構成に成功している。今後は、このアプローチを拡張し、ブレインの運動を考慮したインフレーションモデルを構築し、素粒子基礎理論に基づくインフレーションモデルを見つけることが期待される。
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