1998年に,これまでの宇宙描像を大きく変更するブレインモデルが提案されて以降,5次元以上の時空構造の研究は,トーラスのトポロジーを持つブラックホール解が発見されたり,LHC加速器実験による観測の可能性が示唆されるなど,たいへん注目を集めている.本研究では,高次元時空の本格的なダイナミクスを,数値計算を用いて研究し,時空特異点の形成条件やブラックホールの安定性問題に取り組んでいる.また,計算手法の開発も課題としている. 2012年度(H25年度)には,超弦理論を由来にするガウス・ボンネ重力理論(拡張重力理論)におけるダイナミクス研究に着手した. まず,初期特異点がない時空に注目するために,ワームホール時空の安定性をテーマにした. 4次元アインシュタイン時空でのワームホール(エリス解)は不安定であり, エネルギー的なバランスが崩れることによってブラックホールやスロート膨張することが, 2002年にShinkai-Haywardによって報告されている.我々は,まず,一般N次元空間でこの形のワームホール解を導き,次に摂動計算によって, 不安定モードが存在することを明らかにした.そして,光座標を用いた数値コードを用いて時間発展を行い,予想通りに不安定であることを示した. また,この解をガウス・ボンネ重力理論の補正項を入れた発展方程式で時間発展させ,補正項の影響を明らかにした.
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