前年度に引き続き、初期宇宙の星形成領域において、低金属量のガスと磁場がカップルする条件を広いパラメータ空間で調べてきた。また同時に非理想磁気流体計算を行うことによって、星形成のダイナミクスに金属量と磁場がどのようにかかわるのかを調べてきた。これらの研究成果は最終年度中に査読付論文誌に投稿・出版する予定で研究を進めていたが、いくつかの問題があり、まだ投稿直前の段階である。本研究ではガス中の様々な微量元素・分子の化学反応を非平衡に解き、その結果から電離度を得てレジスティビティを計算し、それを磁気流体計算に落とし込むという流れで計算を行う。特に問題となっているのは、低い金属量で計算を行う際に、非常に高密度の領域になると、非平衡で解いている化学反応が不安定となり、収束が困難となるという点である。このような高密度の領域での結果はそれほどこれまで得た結果を大きく変えるものではないものの、科学研究としての精密性を考慮していまだ投稿の直前でとどまっている。いずれにせよ25年度中に必ず出版しなければならないと考えている。 もう一つ進めてきた研究は、初代星の形成時に降着円盤周りで発生する磁場の見積もりである。この問題の研究には大学院生1名を配置し研究を行った。降着円盤周りの電離構造はすでに東京大学の細川氏らによって2次元の計算で得られているので、細川氏に協力を得、計算データを再処理することで磁場の成長を計算した。その結果、①降着円盤の付近で10のマイナス7乗 ガウス 程度の磁場が発生すること、②発生した磁場は極方向のアウトフローに乗って低密度領域に拡散し、銀河間空間の値ではこれまで調べられてきた宇宙の種磁場の値を一桁程度上回ることをしめした。この研究は完全に計算も終了し、大学院生の修士論文となり、現在投稿の直前の段階となっている。
|