研究概要 |
理論・観測の両面から重力崩壊型超新星爆発における非球対称性の重要性が明らかにされている.しかし超新星爆発における爆発的元素合成研究の多くは球対称が仮定され,様々な不定性を内在する.本研究では,世界に先駆けて,電子陽電子捕獲反応・ニュートリノ吸収反応による電子比進化を考慮した現実的な2,3次元非球対称超新星爆発シミュレーションに基づいて,重力崩壊型超新星における非球対称爆発的元素合成を調査する。 本年度はまず15倍太陽質量の大質量星の2次元非球対称超新星爆発シミュレーションを行った。ただし高密度物質の性質に関しては未だ不明な点もあり、爆発の正否に重要な状態方程式には不定性がある。このために本研究では、原始中性子星が存在する超新星の中心部は計算領域に含めずに、放射されるニュートリノの光度・温度をパラメータとして2次元非球対称超新星爆発計算を行った。次に爆発計算から得られた密度・温度・電子比(中性子過剰度)進化に基づいて、中性子からBi以下の約2000核種を含む核反応ネットワークを用いて放出ガスの質量および化学組成を計算し、以下のことを明らかにした。 (1)爆発エネルギーが(爆発エネルギーの観測値と同程度の)10の51乗erg程度の場合、超新星爆発に伴う放出ガスの化学組成は太陽系組成を再現する。(2)ただし球対称モデルと同様に,Ti44は太陽系組成より少なく,Ni62は多い。 (3)爆発エネルギーが10の51乗erg程度のモデルの場合、爆発後形成される中性子星の質量は典型的な観測値(太陽質量の1.5-1.6倍)程度である。(4)またコアバウンスから200-300ミリ秒と早い時期に爆発する。(5)遅い中性子過剰核(s過程核)の光分解によりp過程核が合成される。Mo92より軽いp過程核は、中性子過剰な放出ガス中においても形成される。
|