研究概要 |
本年度は、当該研究テーマの高次元ブラックホールについて、高次元理論から次元還元で得られる4次元ブラックホールの安定性・不安定性の観点から研究を行った。4次元有効理論には、コンパクト化の自由度により様々な超軽質量ボソン場が現れると期待される。このいわゆる“アクシオン場”が回転ブラックホール時空で引き起こすスーパーラジアンス不安定性を調べるために、摂動方程式を簡単化するスロー回転近似の方法を適用し、解析的および数値的に不安定性について調べた。特に超軽量ボソン場として有質量ベクトル場によるカー・ブラックホール時空の不安定性を初めて示した。さらに、観測された超巨大ブラックホールによる光子の質量上限の導出に応用し、現在のところ最も強い制限を与えることができた。以上の研究成果は、3つの論文にまとめ、Physical Review 誌に発表した。"Black hole bombs and photon mass bounds" Physical Review Letters 109, 131102 (2012), "Perturbations of slowly rotating black holes: massive vector fields in the Kerr metric" Physical Review D86, 104017 (2012), "Superradiant instabilities in astrophysical systems" Physical Review D87, 043513 (2013). また、重力とゲージ理論対応の具体例として重要な、漸近反ドジッター時空が一般的に不安定であるかどうかの懸案について、不安定性の結果起こりうる時空特異点の存在について、解析的な証明を与え、成果を Physical Review 誌に発表した。
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