ミューオンの異常磁気能率 (g-2) の計算に関してはまず一番理論的に不定性の大きな 光-光散乱 (light-by-light)からの寄与の計算にはじめて成功した。計算資源の制約から クォークとミューオン質量を現実世界から変えて行っているが、本年度考案した All-Mode Average (AMA) 法と呼ばれる 誤差縮減法を用いて 計算を 20倍程度高速化することにより非常に有望な結果が出ている。現在より現実的な質量での計算・海クォークの電荷の効果を取り入れた計算を計画中である。また、同じく (g-2) への ハドロンの真空偏極からの寄与も 1%の誤差以下に抑えることを目指して計算中である。 Cabibbo 小林・益川理論に基づく、K中間子の2体π中間子への電弱崩壊の計算は、2体π中間子の状態の内アイソスピンが2 (I=2) の状態への崩壊の直接計算を行った。本年度はより現実の実験に近いクォーク質量と中間子の運動量の設定でシミュレーションを行った世界ではめての結果である。現在の支配的な誤差源は格子化による誤差 約15%であり、これは現在行っているより細かい格子計算をにより大きく改善する予定である。さらに、残り半分の2体π中間子状態 I=0 の計算を、特別な(G-パリティが掛かった)周期的境界条件を課すという新しいアイディアを下に実行中である。複数の互いに繋がっていないクォークループによる大きな統計誤差をいかに抑制するかが鍵のひとつであるが、AMA 予備的な計算ながら肯定的な結果を得ており、ついに40年を超える長きにわたった理論物理の宿題に気着をつけられる目処がつきつつある。さらに、長寿命と単寿命の K中間子間のCP対称性の破れによる混合を 中間子の4点関数を計算する事により実行することに成功し、より現象論的に興味深い K中間子の希崩壊への応用を見込んでいる。
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