研究課題/領域番号 |
22540303
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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研究分担者 |
笠井 香代子 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (40282149)
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キーワード | 太陽ニュートリノ / 2重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ / 金属錯体 / キノリノール錯体 / インジウム / ジルコニウム |
研究概要 |
低エネルギー太陽ニュートリノ及びニュートリノを放出しない2重ベータ崩壊事象の観測実験を目指して、インジウム錯体及びジルコニウム錯体が溶解する新規の液体シンチレータの開発を行った。特に、蛍光発光機能を有するキノリノール錯体に着目し、インジウム・キノリノール錯体(InQ_3)及びジルコニウム・キノリノール錯体(ZrQ_4)の合成を行った。溶解度測定を行った結果、ベンゾニトリル(PhCN)に2%w.t.の溶解度を示すことが得られた。液体シンチレータとして機能するためには、ガンマ線などの放射線に対して、エネルギーに比例した蛍光発光しなければいけない。測定した結果、PhCNが291nmをピークとした蛍光発光を有することを確認した。それぞれの錯体に対し蛍光発光・吸収スペクトルを測定した結果、3×10-5mol/Lの濃度において、InQ_3は発光波長559nm、吸収波長394nm、及びZrQ_4は発光波長548nm、吸収波長383nmにピークを有するスペクトルを得た。また量子収率については、それぞれ5.0%および1.1%が得られた。放射線によるエネルギー輸送を効率的に行うため、ベンゾニトリル20mLにPPO(100mg)/POPOP(10mg)を溶解させ、InQ_3およびZrQ_4を50mg溶解させた液体シンチレータカクテルを作成した。ガンマ線による計測を行った結果、放射線による錯体の蛍光発光を世界で初めて確認することに成功した。光量は標準シンチレータBC505の9.9%および7.3%であり、量子収率は15.6%及び11.5%が得られた。光学測定による量子収率と異なったのは、POPOPの残光を観測したためと考えられる。光量を増加させるためには、量子収率の改善と発光波長を短くすることが求められる。そこで、次年度ではキノリノール配位子に置換基を導入した新たな錯体による放射線計測を計画している。
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