欧州 CERN 研究所の陽子陽子衝突型加速器 LHC と ATLAS 検出器を用いて,重心系エネルギー 7 - 8 TeV の陽子陽子衝突実験を継続し,重いクォークからなるオニウム粒子の研究を進めた。ATLAS 実験は,2013 年初めまでに 27 fb-1 相当のデータを収集した。このデータを用いて,重いクォークオニウムに関するさまざまな測定結果が得られている。 本研究の目的は,ハドロン・ハドロン衝突におけるクォークオニウムの生成機構を解明することである。そのひとつとして,ボトム・反ボトムクォークの束縛状態であるウプシロン粒子の生成断面積が,ミュー粒子対への崩壊を用いて,基底状態(1S)に加え,(2S),(3S)状態も含めて,測定された。全断面積および横運動量とラピディティを変数とする微分断面積が測定された。いくつかの理論予言と比較されたが,運動学変数のすべての領域において満足のゆく記述をする理論はなかった。ウプシロン粒子の生成時のスピン偏極度が種々の理論模型を検証し識別するのに有用であるが,その測定は今後の課題である。 また,クォークオニウム生成に深く関係する反応として,ボトムクォークを含む粒子(B粒子)の生成断面積が,セミレプトニック崩壊 B --> D*+ mu X を再構成することによりなされた。NLO 理論計算と比較すると,実験値は理論値のおよそ 1.5 倍である。これは,テバトロンでのこれまでの測定結果と同じ傾向を示している。
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